近畿方言(きんきほうげん)、俗に言う
関西弁(かんさいべん)は、
近畿地方(
関西)で話される
日本語の方言の総称。
西日本方言に属する。
上代から
近世中期までの中央語であり、現在も
共通語に次ぐ影響力や認知度を持つ。
概説
古代より近畿地方は
畿内平野部を中心に発展した。平安以降は
京都、近世以降は
大阪が最大都市となって文化圏を形成し、言語面でも京阪を中心にして比較的まとまった方言圏が形成された。ただ京阪から離れた辺地、特に奈良県奥吉野や兵庫県但馬や京都府丹後の方言は、
東京式アクセントであるなど京阪方言的性格が薄い。
東條操は「兵庫県の但馬ことばは、京都府の丹後ことばと共に、
鳥取県の方言に似たところがあり特に但馬ことばは
中国方言と見るべきものである」と述べている。
一方近畿地方の外を見ると、高知・愛媛両県南西部を除く
四国方言が音韻・語法とも近畿方言に近く、但馬弁などよりずっと京阪方言に似る。特に
徳島県は京阪神との交流が活発なことから言語面でも影響が強く(
徳島弁#関西方言との関係参照)、また兵庫県
淡路島とは対岸同士ではほとんど方言に変わりがない。次いで近いのは
北陸方言で、特に
福井県嶺南は
鯖街道などを通じて京阪地方との繋がりが深く、言語の点でも「どうしても近畿地方と切り離すことのできない関係にある」と
楳垣実は述べている。
岐阜県西濃もそれに準ずる。
現代の近畿方言で最も勢力が強いのは中心都市大阪の方言であり、お笑いなどを通じて日本全国にも広く認知されている。そのため近畿方言と大阪弁は同一視されやすく、「お笑い」「商人」「やくざ」など大阪弁の
イメージ・
ステレオタイプ(
似非方言#大阪弁参照)で一括りにされやすい。しかしステレオタイプな大阪弁は誇張が加わるため実際の方言とは異なる場合が多く、またお笑いの大阪弁は全国の視聴者にわかりやすいよう共通語を交えるなどするため伝統的な方言とは異なり、「
吉本弁」と揶揄する声もある。
地域別区分
近畿方言は他の方言区画と比べて均一的である。しかし個々の方言意識は高く、特に京都と大阪とでは、京言葉は優美で上品だが馬鹿丁寧で陰険、大阪弁は威勢は良いがどぎつくて下品、などとされ、強い対抗意識を持ってきた。
洒落本『弥味草紙』(1759)にも「此ごろ京よりきたるうかれ女、なにはのどうとんぼりといへる所のうかれ里にたよりてつとめしに、やゝもすれば京ことばをもつてひとをいやしめ、大きいはいかつい、ぬくいはあたたか、其外やごとなきことばのはし〲をおぼへて、そのうたてさかぎりなしとや」とあるほどである。
近畿方言の地域区分には様々な案が提唱されているが、ここでは楳垣実が1954年に発表した区分案(京阪のほぼ中間である
交野市付近を中心に、おおよそ半径50km圏内を「内近畿方言」、半径50〜100km圏内を「中近畿方言」、半径100km圏外を「外近畿方言」と大別するもの)を参考とした。各方言の詳細は各項目(現在ウィキペディア上で独立したページが設けてあるのは、五十音順に
淡路弁・
伊賀弁・
伊勢弁・
近江弁・
大阪弁・
河内弁・
紀州弁・
京言葉・
神戸弁・
志摩弁・
摂津弁・
泉州弁・
但馬弁・
丹後弁・
丹波弁・
奈良弁・
播州弁・
舞鶴弁・
三重弁・
若狭弁)を個別に、周辺の他方言との比較については
日本語の方言の比較表を参照。
による区分案図。橙色が中近畿式方言、水色が北近畿式方言、茶色が西近畿式方言、黄色が東近畿式方言、緑色が南近畿式方言。濃い青色と濃い緑色は非近畿式方言。]]
- 内近畿方言
- 一般に「近畿方言/関西弁」として認識される方言。当記事もこの方言を中心に著している。
-
山城、丹波東部、近江大部分、伊賀の方言。京言葉を中心に発達。
-
摂津、河内、和泉、大和北部の方言。大阪弁を中心に発達。
- 中近畿方言
- 京阪の古い表現を保ちつつ、周辺の他方言の要素を取り入れるなどして独自に変化。
- 丹波北部、丹後南東部、近江北東部、伊勢北部の方言。
-
播磨、淡路、丹波西部の方言。
- 伊勢南部、志摩、紀伊北西部の方言。
- 外近畿方言
- 京阪から離れた地域であり、他の近畿方言との違いが大きいが、古い表現を留める面もある。
- 大和南部(吉野郡南部)、紀伊南部(牟婁郡)の方言。
- 丹後大部分、但馬の方言。
歴史
上代から近世まで日本の中心は畿内だったため、上代は奈良、平安以降は京都の方言が長らく中央語とされた。東国武士の勢力が強まった中世以降は「公家ノ人々、イツシカ云ヒモ習ハヌ坂東声ヲツカヒ、着モナレヌ打烏帽子ニ額ヲ顕シテ、武家ノ人ニ紛レントシケレ共」(『
太平記』)のようなことも起こるが、日本語の規範とされたのは依然京都方言であり、1604年にポルトガル人宣教師
ジョアン・ロドリゲスが著した『日本大文典』にも以下の記述がある。
- 都及び少数の国々、即ち五畿内とその周辺の越前、若狭そのほか少数の国々を除いて、日本の大部分の国においては、開合清濁、即ちアクセントや発音がよろしくなくて、すべてそれぞれの国で勝手に訛って正しくない発音をしてゐる。これらのものは、この国語に於ては粗野であり有害でもあるから、それを理解し、さうして避ける為に知って置かねばならない。
歴史が変わるのは江戸中期である。
上方に対抗しうる
江戸の町人文化が開花を迎え、
江戸言葉が成熟し始める。二つの有力方言が併存・拮抗する日本語史上唯一の事態が生じ、ついには江戸言葉が優勢となっていく。そうしたなかで現代に繋がる上方と江戸の言語対立意識が形成された。
滑稽本『浮世風呂』(1808)にも江戸女と上方女の言葉争いの描写がある(以下はその一部)。
- 「そんなら言はうかへ。江戸詞のからを笑ひなはるが、百人一首(ひやくにんし)の歌に何とあるヱ。「ソレソレ。もう百人一首(ひやくにんし)じゃ。アレハ首(し)じゃない百人一首(ひやくにんしゆ)じゃはいな。まだまアしゃくにんしト言はいで頼母しいナ。「そりゃア、わたしが言損(いひぞこねへ)にもしろさ。「そこねへ、じゃない。言損(いひそこない)じゃ。ゑらふ聞づらいナ。芝居など見るに、今が最後(せへご)だ、観念(かんねん)何たら言ふたり、大願(でへがん)成就忝(かたじけ)ねへなんのかの言ふて、万歳(まんぜへ)の、才蔵(せへぞう)のと、ぎっぱな男が言ふてじゃが、ひかり人(て)のないさかい、よう済んである。「そりゃそりゃ。上方も悪い悪い。ひかり人ッサ。ひかるとは稲妻かへ。おつだネヱ。江戸では叱ると言ふのさ。アイそんな片言は申ません。「ぎっぱにひかる。なるほど。こりゃ私(わし)が誤た。
その後も上方では優越意識を持ち続け、上方周辺や
西回り航路寄港地では上方言葉が影響力を保ったが、江戸後期には既に江戸言葉の優位と上方言葉の威信低下は明らかであった。
江戸時代は、大坂が商都として栄え、京都を凌ぐ上方最大の都市となった時代でもある。豊かな経済力を背景に
上方文化の中心をも担うようになり、言語面でも大坂方言が台頭するようになった。新語の発信源も京都から大坂に移り、近畿方言の潮流が変わった。こうして保守的な京都方言と進取的な大坂方言とで意識し合うようになった。
ちなみに、上方言葉が権威ある言葉とされた江戸中期まで、江戸の一部の上級武士・老人・知識人は上方言葉を真似た話し方をしていたとされる。その後江戸言葉の地位向上に伴い上方風の話し方は廃れたが、一方で上方風の言い回しは「老人の言葉」「権威者の言葉」として
歌舞伎や
戯作などでステレオタイプ化されていった。これが「わしゃ知らぬのじゃ」のような老人や古風な権威者(博士や殿様など)の
役割語の起源である(
老人語も参照)。
明治維新で
東京奠都が行われ、
東京方言を基とする新たな標準語が形成されると、一方言に甘んじることとなった。反発は大きかったものの、学校での標準語教育や標準語に対する
規範意識の高まりなどから、近畿方言も標準語の影響を受けるようになっていった。1954年に
梅棹忠夫が「第二標準語論」(“関東系標準語”に対抗して、関西弁を基とする新たな標準語を作ろうという論)を唱えたこともあるが、実現はしなかった。
現状
話者人口の多さや京阪神の文化力・経済力を背景に、近畿方言は依然共通語に次ぐ方言勢力であり続けている。特に大正・昭和初期から大阪で発達した
漫才は、
ラジオや
テレビといった音声・映像メディアを通じて日本全国に大阪弁の浸透を促すこととなった。1980年代以降は
漫才ブームと関西
お笑いタレントの東京進出の活発化によって、
バラエティ番組において近畿方言は準共通語のようなものになり、若年層を中心に近畿方言に対するイメージが「漫才師の滑稽な言葉」から「場を楽しませる・和ませる言葉」へと変化してきている。そのため、
アイドルのようなイメージを重視し共通語を努めて話すことの多かった業界でも、方言を隠匿せず、むしろプラスの要素とすることも増えつつある。例えば
藤原紀香はドラマ『
愛と青春の宝塚』『
あなたの人生お運びします』『
大奥』で関西弁を話す役を演じ話題になった。「きしょい」「しんどい」「ずぼら」「
へたれ」「ぼやく」「めっちゃ」「むかつく(=腹立たしい)」「ややこしい」「
ヤンキー」など幅広い近畿方言の語彙が共通語化し、また「関東はバカ、関東はアホ」だったのが東京でも「アホよりバカの方がきつく聞こえる」者が多数派となるようなことが起こっている。
全国に通用するという自負と、近世以来の東京への対抗心から、近畿方言話者は自分達の方言に対する愛着心が強いとされる。実際、2000年に大阪で行われた意識調査でも、東京の言葉に対しては7割が「嫌い/どちらかと言えば嫌い」、地元の言葉に対しては9割が「好き/どちらかと言えば好き」と回答している。しかし他方言と同じく共通語化は進んでおり、京阪神の若年層では共通語や
東京の若者言葉が混合した、以下のような
ネオ方言が主流となっている(1993年に
大阪府寝屋川市で収録された20歳女性と21歳女性の会話例)。
- A:やっぱり髪の毛さあ、このままパーマあてるか、ちょっとショートめに切るか、どうしよっかなあ、迷ってんねんやん。
- B:短く切ったら?
- A:うーん。そうやんなあ。結構、雑誌にあんまりいいの載ってないからなあ。
近畿地方には、京都の御所言葉、大阪の商人言葉(特に
船場言葉)や芸能言葉(
歌舞伎・
文楽・
落語・
漫才など)、京阪両都市の
遊郭言葉(京都
島原や大坂
新町など)、
志摩半島の
海人言葉、
紀伊山地の林業や
山岳信仰関係の言葉、
伊勢の
獅子舞神楽言葉など、階層・職業別に多様な言葉遣いがあった。しかし近代化以降、特に戦後は、旧来階層社会や生活習慣が大きく変質し、多様性は薄れている。多様性の衰退は地域間でも起こっており、交通機関の発達に伴う大阪を中心とした
京阪神圏の交流の活発化・拡大によって、「
関西共通語」(関東の
首都圏方言に相当)とも言うべき方言に均質化する傾向にある(これを「関西弁」と称する場合もある)。例えば互いに意識し合ってきた京言葉と大阪弁も、かつてのような違いは高齢層でしか聞かれない。
漫才などの演芸文化に支えられ、
近畿圏の放送局の
ローカルバラエティ番組では、出演者やアナウンサーが方言でトークを進めることは珍しくなく、共通語の規範とされることの多い
NHKも例外ではない。方言がメディアという公の場で一定の幅を利かせているのは他地方ではあまり見られないものである。気さくで和やかな印象から地元視聴者に親しまれているが、メディアの強い影響力から、放送で話される方言(多くは大阪弁と共通語の混合)は近畿方言均質化の一因になっている。
音韻
共通語や東京方言と比べて際立つ近畿方言の音韻の特徴は、
母音ははっきり丁寧に、子音は弱く軽く発音する傾向が強いということである。
母音を丁寧に発音することで
- 1音節語は原則として長音化する。 (例)蚊→かぁ 木→きぃ 子→こぉ
- これに関連してか、「早う学校へ行こう→はよがっこへいこ」のように、本来長く発音するものが短音化する現象もある。
- 母音の無声化や脱落が少ない。 (例)「ネクタイです」→東京「ネkタイでs」/関西「ネクタイですぅ」
-
連母音変化(例:お前→おめえ 寒い→さみい 凄い→すげえ)が、「良い→ええ」「見える→めえる」「痒い→かいい」などの数例を除いてほとんど起こらない。
- 「う」が唇を丸めて発音されやすい(円唇後舌狭母音)。
といった現象が起こる。母音の転訛も他方言と比べると少ないが、「
タヌキ→たのき」「動く→いごく」のように語彙によっては転訛が起こる。
子音を弱く発音することで
- 子音が脱落しやすいことから、ウ音便が発達した。 (例)安う買うた
- サ行音が弱いことから、ハ行音への転訛やサ行イ音便が起こる。 (例)しつこい→ひつこい それで→ほんで
- ザ・ダ・ラ行音の混同が起こる。紀伊などで顕著。 (例)全然→でんでん 淀川の水→よろがわのみる からだ→かだら/からら
といった現象が起こる。このほか、
- 撥音の多用 (例)行かんならんねん←→行かなくちゃ/行かなきゃならないんだ ゴボウ→ごんぼ
- 「ひ」の調音位置が共通語と異なる(声門摩擦音)
- 大阪郊外などでラ行音を巻き舌で粗野に発音することがある(歯茎ふるえ音)。
- 促拗音化(一部の表現) (例)年寄り→とっしょり 好きやねん→すっきゃねん カツオ→かっつぉ
- 撥拗音化(一部の表現) (例)賑やか→にんぎゃか あるのやろ→あんにゃろ 死による→しんにょる
などの特徴もある。また
ガ行鼻濁音は広い地域で聞かれたが、東京以上に衰退が進んでいる。1999年の兵庫県
高砂市での調査によると、ガ行鼻濁音を発音する人の割合は、70〜87歳の老年層では74%なのに対し、17〜20歳の若年層では8%となっている。
母音重視で撥音を多用する近畿方言は、子音重視で促音を多用する東京方言と比べて「柔らかい」「悠長」「余情的」あるいは「歯切れが悪い」「鈍重」「しまりが無い」などの印象を与える。もっとも、早口でまくしたてる漫才などでの大阪弁のイメージから、現在は「騒々しい」「テンポが良い」といった印象も強い。
アクセント
近畿地方は
京阪式アクセント(甲種アクセント)の一大勢力圏である。京阪式は共通語の
東京式アクセント(乙種アクセント)と差異が大きく、近畿方言らしさを印象付ける大きな要素となっている。京阪式には東京式にない特殊な音調があるとして近畿方言を
声調言語とする学者もいる。
一口に京阪式と言っても個人・地域差があり(例:地下鉄「低高低低」/「低低低高」 行きました「高高高低低(大阪)」/「高高低低低(京都)」)、変化も起こっている。変化が最も進んでいるのは京阪神であり、「京阪式」と言えども京阪から離れた和歌山県
田辺市付近・徳島県東部・高知県中東部に最も伝統的なアクセントが残る。現在の京阪神でのアクセント傾向としては、共通語の影響による東京式化あるいは中間化(例:花子「低低高」→「高低低」)、拍内下降の消滅(例:雨ぇ「低高
低」→「低高」)、助詞が続く場合のアクセント変化の衰退(例:海「低高」海が「低低高」→海「低高」海が「低高低」)、略語で顕著な2音節目での強勢(例:
京産「高高高高」→「低高低低」)、東京の
平板アクセント化に似た無核化(例:映画「高低低」→「高高高」)などがある。
隣接する中国地方と東海地方は東京式であり、違いが明瞭である。近畿地方内でも、中国地方に続く形で兵庫県但馬と京都府丹後、孤立した形で奈良県奥吉野に東京式の領域があり、また京阪式と東京式の接触地域や紀伊半島の一部では
垂井式アクセントなどの特殊なアクセントがある。そうした地域では、1音節語の長音化が少なかったり連母音変化が盛んだったりと、音韻面でも他の近畿方言との共通性が薄い。これはアクセントと音韻のなんらかの関連を匂わせるものとして注目される。
表現
- 連用形音便
- ア・ワ行五段動詞(ハ行四段動詞)に「た」「て」が接続する場合、連用形がウ音便となる(例:言うた 会うて)。ただし3音節語と「食う」では音便が省略されやすい(例:思た 笑て)。中近世にはサ行四段動詞のイ音便も盛んで、現在も京阪神以外の高齢層などに残る(例:指いた 出いて)。また「行く」「持つ」の2単語で略音便が起こることがある(例:行てまえ 持て来い)。
- 存在を表す動詞
- 人や生物の存在を表す時、東日本では「いる」を、西日本では「おる」を用いるが、京阪では「いる」を中立以上の表現、「おる」をやや粗野で見下げた表現、として両方を使い分ける(江戸後期以降。「おる」を尊大な語とする江戸の影響からか)。「いる」に進行形を掛け合わせた「いてる」「いとる」もあり、特に「いてる」は大阪で多用する。無生物の存在には共通語と同じく「ある」だが、紀伊の一部では古典用法そのままに「ある」を無生物以外にも用いる(例:婆さん、あるか?)。
- 共通語では「ある」の否定形を作れず(×あらない)形容詞「無い」で代用するが、近畿方言では他の動詞と同様に「あらへん/あれへん」とすることができる。ただ「あらん」は一般的でない。
- 「ある」の丁寧語に「おます」があり、大阪を中心に関西の広い地域で用いた。京都などでは「おす」、大阪船場では「ごわす/ごあす」とも。「ございます」と用法を同じくし、「で」の後に付いて丁寧な断定を表したり(例:ほんまでおます)、形容詞の連用形に接続したりする(例:暑おます)。否定形はそれぞれ「おまへん」「おへん」「ごわへん/おわへん」。
- 特殊な五段動詞
- 「飽く」「借る」「染む/しゅむ」「足る」「垂る」などは、関東では江戸時代に一段化したのに対し、関西ではそれ以降も五段活用を保った(例:図書館で本を借った←→図書館で本を借りた)。ただし現在は共通語の影響で関西でも一段形が主流である。
- 連用形
- 形容詞と希望の助動詞「たい」の連用形には中世以来ウ音便を用い、
- # 語幹がu音/o音で終わる→u音/o音を長音化。 (例)暑う 遅う
- # 語幹がa音で終わる→o音に変化させた上で長音化。 (例)長う 行きとう
- # 語幹がi音で終わる(シク活用)→拗音化させた上で長音化。 (例)楽しゅう よろしゅう
- の3種類がある。しかし現在の京阪神では活用が簡略化しており、特に後ろが「ない」「なる」などの場合、3は「楽しゅうない」→「楽しいない」のような拗音を直音化させた形(江戸後期からの簡略化)、2は「長あない」「行きたあない」のような語幹と同じ形(近代からの簡略化)が主流となっている。これに長音の短音化が加わり、1から3全てが「暑ない」「長ない」「楽しない」のように語幹のみの無活用形となりつつある。
- 連用形に「に」を加えたり、婉曲な「連体形+こと」で代用することも多い(例:よろしゅうに頼んます やさしいにして 楽しいことない)。
- 連用形の後ろに「て」「ても」が付く場合、通常の形(例:長うて おいしゅうて/おいしいて 無うて)だけでなく、「かって」(例:長かって おいしかって 無かって)を用いることもある。助動詞「たい」「んかった」などにも当てはまる(例:行きたかって 行かんかって)。
- 詠嘆 語幹(+長音) (例)あっつぅ! あ痛! あぁしょうもなぁ
- 近畿方言に「あつーい!」「あちぃ!」のような語法はなく、語幹用法を多用する。「たい」にも当てはめることができる(例:海外行きたぁ)。京都などでは「暑い暑いなぁ」のように畳語も多用する。
- 形容動詞に関しては「だ」が「や」に換わるほかは概ね共通語と変わりない(例:きれいやった)。ただし大阪などで「奇麗/綺麗」を「きれ-い」と誤認して形容詞活用させる例がある(例:きれかった)。
- 京阪では婉曲表現が発達している。よく知られた京阪双方のフレーズ「ぶぶ漬けでも…」や「ぼちぼちでんなぁ」はもちろん、日常的な会話でも「考えとくわ(=お断りだよ)」「ちょっと足らんように思いますけど(=お釣りが足りません)」のように婉曲表現を多用する。共通語では回りくどい過剰敬語とされる「(さ)せてもらう/いただく」も京阪ではごく普通であり、そもそも「(さ)せて…」自体が関西から全国に広まった表現である。
- 共通語同様、近畿方言でも性差による表現の違いが存在する。とりわけ近代の大阪では「嫌やしぃ(=嫌だわ)」「買うとうわ(=買って頂戴よ)」「見てみいで(=見てみなさいよ)」のような独特の女性語があった。近畿方言の性差の特徴は、女性語が男性層にも広まるケースが多いことである。「や」「へん」「はる」「やんか」など現在日常的に多用する表現も、元は女性層で生まれた語である。
- 近畿方言では敬語から侮蔑語に至るまで待遇表現が発達しており、顕著な近江弁では若年層でも7種類の待遇表現を使い分けるという。近畿方言での待遇表現の特徴は、第三者の動作に対して日常的に多用することであり、これは敬語表現で際立つ。
- 敬語体系は、紀伊を除き(紀州弁#敬語参照)京都を中心にして複雑に発達した。東京方言の敬語の基礎も江戸初期に京言葉の影響を強く受けて形成されたものであり、「お寒うございます」「しておりません」などに名残りが見られる。明治以降は敬語体系の簡略化や共通語化が進むが、その一方で、共通語では廃れつつある第三者への尊敬語の使用が依然盛んであるなど、素材敬語的な性格を強く保っている。
- 「ます」
- 共通語と同様、敬体には「ます」を用いる。ただし勧誘「ましょう」が「まひょ/まほ/まよ」、否定「ません」が「まへん」と転ずることがある。否定には「連用形+はしませぬ」の転で婉曲な「(「へん」と同じ接続)+しません/しまへん」もある(例:行かしまへん/行けしまへん)。近世の大坂などでは「やす」とも言い(例:わかりやした)、これは江戸にも伝わった。
- 連用形+「なはる」 (例)行きなはる
- 「なさる」の転。語頭に「お」を付けることも多い(例:お行きなはる)。明治以降「やはる」「はる」などの変化形が広まり、「なはる」は古風な表現となった。ただ「やはる」「はる」には命令形がないことから、命令表現には「なはる」の命令形「なはれ」や「なはい」(転じて「ない」とも)が用いられ続けた(例:行っとくんなはれ)。丹波・丹後では「なる」。
- 五段a音/一段連用形+「はる」 (例)行かはる
- 「行きなはる」→「行きやはる」→「行きゃはる」と転じたもの。相手や第三者に対する軽い敬意を表す。京阪を中心に広い地域で用いる。大阪では「なさる」への回帰意識から五段動詞でも「連用形+はる」とすることがある(例:行きはる)。「て」に接続する場合は「てはる」と「たはる」の二通りがあり、「たはる」は主に京都で用いる(例:行ってはる 行ったはる)。京都や滋賀では第三者の動作を表す際に「はる」を用いる頻度が特に高く、親しい同輩以下の動作にも用いることがある(例:兄ちゃんが泣かさはった)。なお京阪方言話者が共通語の敬語を使おうとする際、「はる」に語法が近い「(ら)れる」を多用する傾向がある(例:いらっしゃる→おられる)。
- 「(お)連用形+やす」 (例)お行きやす
- 「はる」よりも敬意の高い表現で、丁寧な命令表現としても多用。金田一春彦によると「お 連用形+遊ばせ」が「お行きあすばせ」→「お行きあす」→「お行きやす」と転じたものという。京都で盛んな表現だが、それ以外の地域でも「ごめんやす(=ごめんなさい/ごめんください)」のように慣用表現で用いることはあった。「お行きやしとくれやす」のように「やす」を重ねると極めて高い敬意を表す。「て」に接続する場合は「て御居やす」の転「といやす」とする(例:行っといやした)。くだけた表現に「やす」+「や」の転「やっしゃ」(例:ごめんやっしゃ)などがある。
- 連用形+「て」+断定の助動詞 (例)行ってや 行っとってです
- 相手や第三者に対する軽い敬意あるいは親しみを表す。「はる」普及以前の近世に多用され、現在も播磨や丹波などで用いる。昭和30年代時点では神戸市東灘区の住吉川が「てや」と「はる」の境界だったが、現在は神戸市内や播磨東部でも「はる」が広まりつつある。同形の命令・依頼表現とはアクセントで区別し、例えば「行っとってや」を平板に発音すると「行っててよ」、「や」を低くすると「行っておいでだ」の意。過去形「てやった」は地域によって「た(あ)った」や「ちゃった」となる。
- 連用形+「おる」 (例)行きおる 行きよる
- 「おる」を待遇の補助動詞に転用したもので、同輩以下の第三者の動作に対して親しみあるいは軽い侮蔑・苛立ちなどの意を加える。男性が多用する。「よる」と転ずることが多い。自分に不利益な無生物の変化・作用に用いて、その無生物への苛立ち・不快の意を強める効果もある(例:雨が降ってきよった!)。
- 連用形+「やる」 (例)行きやる
- 「ある」の転で、江戸時代には相手の動作に対して軽い敬意を、近代以降は同輩以下の第三者の動作に対して親しみの意を加える表現として、大阪などで主に女性が用いた。「おる/よる」と対照的に現在は衰退が進む。
- 侮蔑語
- 近畿方言の侮蔑語としては「(て)くさる」「さらす」「てけつかる」などがあり、なかでも「てけつかる」は非常に強烈な悪態語である。
- 連用形+「ている」 (例)行っている
- 東日本方言的な表現だが、京阪では「ておる」よりも多用する。共通語と同じく「てる」とするのが自然である(例:行ってる)。
- 連用形+「ておる」 (例)行っておる
- 西日本方言では一般的な表現だが、京阪では「ている」よりもやや粗野な表現とし(先述「おる」参照)、特に京都では女性の多用は好まれない。ただし謙譲語として用いる場合には粗野な印象は薄れる。「と(お)る」と転ずることが多い。
- 連用形+「てある」 (例)雨が降ってある
- 無生物の動作に用いる表現。「た(あ)る」や「ちゃある」(紀伊・和泉など)と転じることが多い。「いる」の意で「ある」を用いる紀伊の一部では「てある」も「ている」の意で用いる。共通語とは「ている」「てある」の使い分けが異なる場合がある(例:たかが知れたある)。
- 連用形+「てまう」 (例)行ってまう
- 「てしまう」のくだけた表現。東京の「ちまう」「ちゃう」に当たる。過去形は「てもうた」だが、「てもた」と短音化することも多い。
- 連用形+「かける」
- 「かける」という表現には「…し始めた途中」と「もう少しで…し始める」の二つの意味合いがあるが、近畿方言話者は前者で用いる傾向が強い。例えば「ご飯を食べかけた時に電話が鳴った」の場合、東京では「さあ食べようという時」と捉える人が多いのに対し、関西では「2、3口ほど口に含んでいた時」と捉える人が多い。また「先に行きかけといて」(先に行き始めておいて)のように「かける」を依頼・命令表現でも用いる。
- 他の西日本方言では「とる」は結果・状態、「おる/よる」は進行・継続を表す。関西でも江戸後期以前はそうであり、播磨や丹波などでは現在もこの用法を保つ。なお播磨・神戸では「とる」「よる」は「とう」「よう」と転ずることが多い。 (例)こけよった!(危うく転ぶところだった!) 桜が散っとう(桜が散ってしまっている) 桜が散りよう(桜が今まさに散っている/散ろうとしている)
- 「や」 (例)ほんまや
- 室町以降「である」の変形「であ」が「ぢゃ/じゃ」、江戸後期以降さらに「や」と転じて成立(関東の「だ」も「であ」の転)。「じゃ」は関西の大部分では大正までに取って代わられ、罵倒など強い口調の際に終止形を用いるのみとなった(例:何見とんじゃ!)。活用での「だ」との違いには、「であって」に近い過去中止形「やって」(例:実家が貧乏やって、若い頃苦労したわ)、仮定形「なら」をほとんど用いない(後述「仮定」参照)などがある。
- 指示語「こそあど」との接続では、「そ」「ど」の場合「そうや」「どうや」→「そや」「どや」と短音化することが多い。さらに「しや/しゃあ/せや」「でや」などと転ずることもある。
- 共通語では「だから」「だが」「だったら」のように「だ」を文頭で用いることがあるが、「や」には当てはまらない(例:×やさかい ×やったら)。ただ若年層では共通語の影響を受け「やけどさぁ」のように文頭でも「や」を用いるようになった。
- 断定「や」に似たものに、「嘘やない(か)」のような「やない(か)」がある。これは「ではない(か)」の転であり断定「や」とは別物だが、断定「や」同然に認識され多用される。このほかにも断定「や」に引かれてか、「やら」の転「や」(例:何や知らんけど)、命令・勧誘・禁止の終助詞「や」(後述)、「やんか」「やん」(後述)など、近畿方言では「や」を多用する傾向がある。
- 体言に付く場合は、「の」を介して「のや」とする。くだけて「んや」「ねや」「にゃ」などとも。助動詞「や」との接続は、「のや/んや」は「なのや/なんや」(例:ほんまなんや)、「ねや」は「やねや」(例:ほんまやねや)とする。共通語「のだ/んだ」と違い、敬体にも接続可能(例:○行きますのや←→×行きますのだ)。「ここにあんのや/ねや」のように、前に来る「る」は撥音化しやすい。「ねや」がさらに転じたものが後述「ねん」である。
- 「だす」「どす」 (例)ほんまだす/どす
- 「でやす」の転「だす」は大阪を中心に播磨から奈良北部・伊賀周辺まで、「でおす」の転「どす」は京都を中心に丹波東部から滋賀・若狭まで広がる表現で、ともに幕末から明治にかけてやや卑俗な表現として成立。成立後まもなくに標準語として東京の「です」が伝播したため、中流以上には浸透しないまま、早いうちから衰退していった。現在は一部の高齢層と特殊な場面(古典落語、京都の芸妓言葉など)でしか聞かれない。「です」と同様、形容詞には本来付けない(例:×暑いだす/どす)。
- くだけた文での助詞の省略は東京よりも盛んである。頻繁に省略が起こるものには目的格「を」(例:気ぃ付ける)や「言う」「思う」に続く引用の「と」「て」(例:田中さん言う人 田中さんや思た)などがある。ただし東京の「食べ行かねえ?」のような「に」の省略は起こらない。
- 「て」前の促音化は共通語ほど起こらず、助動詞「や」に接続する場合も「やて」とすることが多い(例:田中さんて人 そうなんやて)。また「と言う」を縮める場合は「つう」ではなく「ちゅう」とする(例:田中さんちゅう人)。
- 終助詞
- 近畿方言でも様々な終助詞を用い、敬体にも「敬体連体形+終助詞」の形で盛んに付けた(例:あきまへんがな ほんまですねん)。「だす/どす/です」「ます」「おます/おす」などに付けた時、「す」が促音化・撥音化することがある。これは大阪で顕著であり、大阪弁らしさを醸し出す一因となる(例:儲かりますか→儲かりまっか ぼちぼちですな→ぼちぼちでんな)。
- 「ねん」
- 先述「ねや」の転で、「ね」とも。撥音で終わることから「ねや」より語感は柔らかいが、相手への自己主張の意は強くなっている。助動詞「や」との接続は「ねや」と同じ(例:ほんまやねん)。「や」からの派生意識が薄れたため「やねんや」や「やねんやん(か)」(若年層)のような表現も可能である(例:ほんまやねんやろ。共通語に直訳すると「本当だのだのだろ」)。「ここにあんねん」のように、前に来る「る」は撥音化しやすい。
- 「てん」
- 「たのや/たんや」が「ねん」からの類推によって変化したもので、「ねん」の過去表現に当たる。和泉など一部では、「た」に「ねん」を直接付けた「たねん」も用いる。
- 「な」
- 終助詞としてはもちろん、間投助詞や呼びかけの感動詞としても多用する(例:なぁなぁ、私なぁ、昨日なぁ、…)。元々「な」は目上・目下問わず用い、くだけた表現に「の」があった(紀伊などでは「の」を目上、「な」を目下への表現としていた)。しかし共通語「ね」の浸透とともに、目上に対してや改まった場での「な」の使用は避けられるようになり、「の」も年配男性以外はあまり用いなくなった。
- 「わ」
- 東京の女性語と同形だが、近畿方言の「わ」は下降調で男女とも多用する。ただし「わ」に抑揚を付けて詠嘆の意を強める「わぁ」は男性はあまり用いず、東京の女性語「わ」に近いと言える。かつては「わ」の強調表現に「わい」も多用したが、現在は年配男性以外ほとんど用いない。「な」とともに用いることも多い(例:ほんまやわな/わいな)。促音化すると「っさ」となる(例:行きまっさ)。
- 「で」
- 強調・注意・問いかけなどを表す。「ぜ」の転だが、東京の「ぜ」とは、「行こうぜ」のような勧誘用法はあまり一般的でない、「よ」程度の軽い意味合いで女性も多用する、といった違いがある。「ぜ」→「で」のように「ぞ」→「ど」の転もあるが、こちらは粗野な印象が強く女性は用いない(例:獲ったど)。「ここにあんで」のように、前に来る「る」は撥音化しやすい。
- 「や」
- 命令・勧誘・禁止などの文末に付ける。尻下がりに強く言い切るもの(「やい」の省略か)と尻上がりに柔らかく発音するもの(先述「やる」の命令形「やれ」の省略か)がある。共通語と違い、詠嘆の終助詞として形容詞や助動詞の後ろに付けることはない(例:×もうええや←→○もういいや ×わからんや←→○わかんないや)。
- 「がな」
- 主張・啓発・たしなめ・慰めなどを表す。京阪神以外では「が(あ)」などとも。
- 「え」
- 柔らかな主張・問いかけなどを表す。京都の女性語としてよく知られる。促音化すると「っせ」となる(例:行きまっせ)。
- 「よ」
- 近世以降の京阪では命令表現(例:早うせえよ)などでしか用いなかったが、共通語の影響で女性層を中心に使用例が増えている(例:ほんまなんよ)。ただ「ほんまやよ/やんよ」のようなヤ行音が連続する例は一般的となっていない。
- 疑問・反語
- 共通語と同様、通常は「か」、きつく言う場合は「かい」を用いる。「かい」に柔らかく含みを持たせる場合は「かいな」、やや粗野な表現で「かいや」とも。
- 「かえ」または「かい」の転「け」を「か」の代わりに用いることもある。京阪神では粗野な表現として男性がくだけた会話で用いるが、「か」と同等あるいは丁寧な語として多用する地域もあり、特に河内弁の特徴として知られる。地域によっては「こ」とも。なお「何やったっけ?」のような「け」は元は古語「けり」から転じた関東方言であり、ここでの「け」とは無関係である。
- 「やんか」「やん」
- 反語的な断定や主張を表す。「やんか」は明治後期・大正頃に大阪の若い女性層から広まった表現で、「やないか」の転とする説と「や」+「んか」とする説がある。地域・個人によっては「け」を用いた「やんけ」や、強めた言い方「やんかいな」「やんかいさ」なども。「やん」は「やんか/け」の省略で、戦後に若い女性層を中心に広まった。東海・関東の「じゃん」に似るが、敬体に接続が可能なこと(例:ほんまですやん)や「だろ?」に近い用法(例:まさか…嘘やん?!)、語尾を下降させる婉曲な伝達表現(例:今度東京行くんやん↓/やんかぁ↓)、「だよな/だよね」に当たる「やんな」(例:ほんまやんな)などの違いがある。また「ねん/てん」に「やんか」を接続させる場合、「ねんか/てんか」と省略することがある(例:ほんまやねんか)。
- 「のん」「ん」
- 「の」は、主に準体助詞(例:それは私のんや)や疑問・柔らかな主張の終助詞(例:ほんまなん? ほんまやのん?)として用いる場合に撥音化がよく起こる。「のん」は女性が多用する傾向がある。「どこにあんのん?」のように、「のん」の前に来る「る」は撥音化しやすい。
- 「かて/かって」
- 「かとて」「かてて」の転。接続助詞として活用語(主に過去「た」や否定「ん」)の連体形に接続して逆接条件を表す(例:何したかてあかん)ほか、副助詞として体言または体言+格助詞に接続して共通語「だって」「でさえ」の意味合いを表す(例:私かてできる)。文頭で用いる場合は「そやかて/そうかて」とする。
- 原因・理由
- 関東の「から」に対する語として、「さかい」と「よって」がある。「さかい」は中世末に成立したとされ、「境」が語源だとする説と古語「け」の転だとする説がある。「さかいに」「さかいで」「さけ」などとも。「よって」は鎌倉時代に成立した「によって」の省略で、「よってに」とも。どちらも近世以来多用された表現だが、現在は「から」に押されている。京都などでは簡潔な表現として「し」も併用する(例:そやし言うたやろ)。
- 未然形+「ん」、五段a音またはe音/上一段i音またはe音/下一段e音+「へん」 (例)行かん 行かへん 行けへん
- 「ん」は文語助動詞「ず」連体形から派生した「ぬ」の転。「へん」は「ん」の強調表現「連用形+はせん」が幕末から明治にかけて「行きはせん」→「行きやせん/行きやへん」→「行きゃせん/行きゃへん」と転じたもの。婉曲表現を好む京阪では「へん」が急速に普及し、強調の意が薄れるとともに「ん」を圧倒するまでになった。
- 「a音+へん」は京都で、「e音+へん」は大阪でそれぞれ盛んな語法。「へん」の前が1音節の場合、かつては「やへん」としたが、現在は前音を伸ばす形が主流である(例:出やへん→出えへん)。上一段に接続する場合「ひん」に転ずることがあり、特に京都で顕著である(例:起きひん 見いひん 居いひん)。サ変の否定は「せえへん」「しいひん」(京都)、カ変の否定は「けえへん」「きいひん」(京都)などとなる。ただしカ変に関しては、共通語「来ない」に影響された「こおへん」が主流となりつつある(播磨・神戸から広まり出したという)。
- 活用は共通語「ない」ほど発達していない。連用形・終止形・連体形しかなく、活用形も全て「ん」「へん」である。そのうち連用形は「んで」「んでも」に用い(例:行かんでもええ)、形容詞「無い」への接続は「んこと」、動詞への接続は「んよう」で代用する(例:行かんこともない 行かんようになる)。若年層では「ない」の連用形と「ん」の混合形「んく」が広まりつつある(例:行かんくても 行かんくない 行かんくなる)。
- 未然形+「な」 (例)行かなあかん
- 「ねば」→「にゃ(あ)」→「な」と転じたもの。後ろに「ならん」が付く場合は「んならん」(「ら」は省略することも)となる(例:行かんならん)。大阪・奈良・紀伊などでは「連用形+やな」とも(例:行きやなあかん)。
- 未然形+「いで」 (例)行かいで
- 共通語「ずに」に相当。「未然形+んで」あるいは「未然形+ずて」の転という。反語表現にも用いる(例:行かいでか)。後述「んと」に押されて京阪神ではほとんど死語。
- 未然形+「んと」
- # ねば。 (例)行かんとあかん
- # ずに。 (例)仕事もせんと遊んでばかり
- 前者は「ぬと」の転、後者は「ずと」の転で、明治頃に「んと」に集約されたという。集約されてもアクセントの違いは残っており、前者は平板に、後者は「ん」で下げる。大阪・奈良・紀伊などでは「連用形+やんと」とも。
- 過去形
- 否定の過去形は室町以来「なんだ」(例:行かなんだ)を用い、明治に「へん」が成立すると「へなんだ」(「せなんだ」の転)と「へん」の混合形「へん(なん)だ」(例:行かへんなんだ/へんだ)も生まれた。しかし大正頃から共通語「なかった」と「ん」「へん」の混合形「(へ)んかった」が登場し、現在「なんだ」はほとんど死語となっている。
- 他の西日本方言と同様、近畿方言では能力による不可能と状況による不可能を区別する。しかし、区別をしない共通語の影響から、両者の混合形(例:よう泳げん/泳がれへん)が用いられるようになるなど区別が曖昧化しつつある。
- 能力による不可能 「よう 未然形+ん」 (例)浮き輪なしには よう泳がん
- 行う能力が無くて、行う立場になくて、行うのが憚られて、行う気になれず、到底出来ないという意味合いを表す。「よう」は「能く」のウ音便形であり、「良う/善う」と違い平板に発音する。古語「え…ず」と同義で、それから派生したとされる。
- 状況による不可能 未然形+「れへん」 (例)クラゲがおって泳がれへん
- 通常の否定を「e音+へん」とする地域で多用する。可能動詞を用いない古い表現だが、これは可能動詞を用いた不可能表現と「e音+へん」の同音衝突を避けるために古形が保たれたもの。「a音+へん」の地域は可能動詞を用いることが多いため、「れへん」を用いる地域(大阪など)とそうでない地域(京都など)の者同士で意思疎通に支障を来すことがある。例えば、京都人が「(用事で)行けない」の意で「行けへん」と言ったのを、相手の大阪人は「(行きたくないから)行かない」と取り違えてしまうなど。
- 近畿方言では様々な命令表現が発達し、強い命令から穏やかな命令まで場面に応じて細かに使い分ける。丁寧な命令表現について先述「やす」「なはる」を参照。
- 命令形表現
- 五段・カ変動詞の命令形は共通語と変わりないが、サ変・一段動詞の命令形には文語命令形「…よ」の転「…い」を用い(例:見よ→見い)、そのうちサ変と下一段の場合は前のe音に引かれて「…え」と発音することが多い(例:為よ→せい/せえ 食べよ→食べえ)。命令形の後ろに付ける終助詞としては「よ」「や」が一般的。女性は通常連用形表現を用いることが多く、前田勇は「若しも大阪女にして『上れ』だの『飲め』『待て』だの云つたとするならば、それは男か鬼のやうな女であらう。」とまで述べている。なお「しろ」「食べろ」など「ろ」で終わる命令形は本来東日本方言であり、明治以降に標準語として東京から伝播するまで関西では用いなかった。
- 連用形表現 (例)行き
- 穏やかな命令表現。「連用形+なされ」の後略。後ろには「な」「や」を付けることが多い(例:行きや)。1音節語ではほぼ必ず、1音節語以外でも穏やかに念を押す場合に、長音化(ただし下一段は「え」ではなく「い」とすることが多い)が起こる(例:為ぃ 来ぃ 行きぃ 食べぇ/食べい)。一段動詞では連用形表現と命令形表現は同形になるが、アクセントによる区別があり、例えば「見てみい」「食べえ」は「い」「え」で下げると命令形表現、平板だと連用形表現である。また一段動詞では「い」をより伸ばして念を強めることがある(例:食べいいな/いや)。京都などでは「お行き」「お見」のように「お」を付けて丁寧語化させることもある。
- 否定の助動詞+疑問の終助詞
- 否定の助動詞と疑問の終助詞による表現も多用する。「かい」を用いるものはとりわけ強い命令を表す(例:行かんかい!)。動詞未然形に付くものだけでなく、幾分穏やかな命令として「連用形+ん+疑問」(例:行きんか)や「て+ん+か」(例:行ってんか)もある。
- 「て」を用いた表現
- 「て」も共通語と同様に多用する。後ろには「な」「や」を付けることが多い(例:行ってな/行ってや)。「てえ」と伸ばすと甘えた命令・依頼表現になる(例:行ってえなぁ/やぁ)。
- 以上のほかにも、京都の女性層で同輩以下に用いる「よし」(例:行きよし)など、各地に特有の表現がある。
- 命令表現と同じく、禁止表現にも通常のものと連用形を用いる穏やかなものとがある。
- 終止形表現 (例)行くな
- 共通語とは、サ変の場合「するな/すんな」と「すな」の三つの形(後のものほど強い禁止を表す)がある、「な」の後ろに「や」を付けることが多い(例:行くなや)、などが異なる。
- 連用形表現 連用形+「な」 (例)危ないとこへは行きな
- 穏やかな禁止表現。「連用形+なさるな」の後略。「な」のほかに「なや」「ないな」なども用いる(例:行きなや 行きないな)。「て」の後ろにも接続する(例:行ってな)。連用形命令表現と同形になることがあるが、アクセントによって区別する。例えば「行きな」「行ってな」をともに平板に発音すると命令、「な」で下げると禁止を表す。
- 近畿方言でも意志・勧誘の助動詞は「う」「よう」である。ただしサ変とカ変では古形の「しょう」「こう」を用い(例:どないしょう 行ってこう)、また「う」「よう」に伴う長音は省略されやすい(例:行こか どないしょ)。
- 明治以降「や」を用いた「終止形+やろう」が主流で、「行ったろう」「赤かろう」「なかろう」などの表現は共通語以上に古めかしいものとなっている。丁寧形も「敬体終止形+やろ」(促音化すると「っしゃろ」)であり、先述「だす/どす」の推量表現も共通語「でしょう」のような形は取らない(例:○ほんまだっしゃろ/どっしゃろ/ほんまでっしゃろ ×ほんまだしょう/どしょう)。「だろう」は男性的なニュアンスが強いが、「やろう」は女性も多用する。
- 打ち消し推量も明治以降は「(へ)んやろ」が主流。かつては「まい」を用いたが、江戸・東京にはない「未然形+う+まい」という形もあり(例:しょまい 行こまい 食べよまい)、各地で「未然形+う+まい(か)」を勧誘表現に用いた(例:早う行こまいか)。
- 仮定は「連用形+たら」にほぼ一本化されている。例えば共通語では「行ったら」「行けば/行きゃ」「行くと」や「行くなら」「行くのなら」「行くのだったら」などと言い分けるところも、近畿方言話者は「行ったら」や「行くんやったら」で済ませる傾向がある。特に「なら」は「ほんなら/ほな」(「それなら」の転)と「さよなら/さいなら」以外ではほとんど用いない。
- 近畿方言でも授受表現は「やる」「あげる」「くれる」「もらう」「いただく」である。「てやる」は「たる」や「ちゃる」(紀伊・和泉など)とも。共通語とは、「AがBに…してやる/あげる/くれる」よりも「BがAに…してもらう/いただく」の形式を好む、「欲しけりゃくれてやる」のように自分から相手への動作に「くれる」を用いることはない、「邪魔やさかい退いたれや(=邪魔だから退いてくれよ)」「堪忍したって(=勘弁して)」のように「やる」を用いた第三者的で婉曲な命令・依頼表現がある、といった違いがある。
- 「やる」の強い言い方に大阪などの「てこます」がある。「与えてやる」「やってやる」が原義で、「行てこましたろか(=やっつけてやろうか)」のように喧嘩言葉で用いるほか、自分の動作に諧謔性を込めるのにも用いる(例:何もええこと無いし、もう寝てこまそ)。
- 共通語ではやや古風となった「す」「さす」を、近畿方言では現在も常用する。ただし活用は「ささん(=させん)」「さした(=させた)」のように五段化して用いることが多い。五段以外の動詞に付く場合に「連用形+やす」を用いる地域もある(例:見やす 来やさん)。
- 「とく」は「ておく」の転、「んとく」は「んとおく」の転。共通語「とく」「ないでおく」に比べて使用範囲や頻度が大きく、特に軽い命令・禁止表現で多用する(例:行っとき 行かんとき 行かんといて)。
- 「と違う(か)」 (例)チャウチャウ違うん違う?
- 共通語「ではない(か)」に当たる表現には「やない(か)」に加えて「と違う(か)」がある。「と」は頻繁に省略が起こる。「違う」は、終止形・連体形と「ます」に続く連用形では「ちゃう」「ちゃいます」と転ずることが多い。現在若年層を中心に「違う」を形容詞的に活用させることがある(例:違うかった 違うくて)。
- 共通語「○のよう/んな(に)」に当たる表現に「○ない」がある。前田勇によると「○概」が「○ŋai」→「○nai」と転じたもので、西日本各地の「○がん」「○げん」「○ぎゃん」に類するという。 (例)調子どないや? どないもこないも
- よく知られた京阪の一人称には、少女や若い女性が用いる「うち」、「わたい」の転「わて」(当初は女性語で、のち男性も使用。女性は「あて」とも)、「わし」の転で男性が用いる「わい」(二人称でも使用)がある。現在「わて」「わい」は年配者以外ほとんど用いない。
- 京阪では二人称には「あんた」「おまえ」を多用する。丁寧な二人称には「おたく(さん)」や「あんたはん」(くだけた形で「あんさん」とも)、「おまはん」(「御前様」の転。同輩以下に対して)などを用いた。「あなた」は江戸後期に一度死語化しており、現在用いるのは明治以降東京から標準語として逆移入されたものである。
- 「自分」や「われ」など一人称を二人称で用いる例があるが、これは関西に限ったものでなく、東京の「てめえ」などと同様のものである。
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敬称には「さん」を多用し、慣用表現にもたびたび付ける(例:ありがとうさん)。通常のオフィスマナーではよくないとされがちな団体・法人名への「さん」付けも普通に行われ、むしろ敬意・親しみの表現として歓迎されることがよくある。くだけた場面では「はん」と転ずることがあるが(例:お母はん 舞妓はん)、i音・u音・撥音・ハ行の後では通常「はん」にはならない。このほか、親しい相手に用いる「やん」(例:兄やん 源やん)や商家で奉公人に用いた「どん」(例:丁稚どん)などがある。
語彙
現在近畿地方で広く用いる語彙の多くは、京阪で生まれて各地へ伝播したものである。近畿地方外に広まるものも少なくなく、「なんぼ」が西日本各地や
東北地方でも用いられるのは好例である。また大阪が近世から近代まで商工業の拠点だった歴史から、「ちょろまかす」「勉強する(=安くする)」「ぼったくる」「ぼろい(=労せず儲かる)」など大阪の商業用語のいくらかは全国に広まっている。
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あかん【明かん】 - 駄目だ。いけない。ならない。「埒があかぬ」の略。一部で「あかへん」とも。
- あかんたれ【明かん垂れ】 - 駄目な奴。弱虫。小心者。
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あじない/あんない【味無い】 - 美味しくない。まずい。京都周辺の言い方。
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あて【当て】 - 酒の肴。お通しのことは「突き出し」と言う。
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あほ(う)【阿呆/阿房】 - 愚かなこと。関東の「馬鹿」に対する。強めて言う場合「あっぽ(う)」などとも(主に子供)。
- あほほど【阿呆程】 - (馬鹿みたいに)数量が甚だしい様子。
- あほんだら【阿呆陀羅?】 - 大馬鹿野郎。
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あんじょう - 上手に。上手く。「味良く」の転。 (例)あんじょう頼んまっさ(上手く頼みますよ)
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いか(のぼり) - 凧。共通語「たこ」がタコに由来するのと同様、姿がイカに似ることに由来。
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いけず - 意地悪。近世には「いかず」とも。元は「一筋縄では行かぬ」ことから、強情者・頑固者・ならず者などを指した。
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いちびる - 調子に乗る。ふざける。名詞形「いちびり」でお調子者の意。
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いと - 娘。お嬢ちゃん。「いとけない(=幼い)」あるいは「いとしげない(=愛しい)」の略か。「ぼん」の対義語。 (例)いとはん(お嬢さん)
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いぬ【去ぬ/往ぬ】 - 帰る。去る。元はナ変活用だが、江戸中期以降は四段活用。 (例)とっとといね!(とっとと失せろ!)
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いや - 「い」に抑揚を付けて、女性が多用する。「おやまあ」などに相当。
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いらう【弄う】 - いじる。触る。弄ぶ。 (例)かさぶたいろうたらあかん(かさぶたを弄っては駄目だ)
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いらち【苛ち】 - 短気者。せっかち。「いらつ」(苛立つ、焦る)の名詞形。大阪人気質を端的に表す言葉とされる。
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いわす - やり込める。やっつける。「グウの音を言わす」ことから。転じて、せしめる。(体を)壊す。 (例)肩をいわした(肩を壊した)
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ええ - 「よい」の転。関東の「いい」は「ええ」がさらに転じたもの。丁寧表現には「よろしい」を多用し、「ええです」は一般的でない。 (例)ええし(良家。金持ちの家。「ええ衆」の転)
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えげつない - 強烈な。卑劣な。あくどい。露骨な。かつては「いげちない」と言った。
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えずく - 吐き気を催す。吐く。吐き気が込み上げた時の声(オエッ)と「衝く」が組み合わさったものという。
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えらい【偉い/豪い/苛い】 - 立派な/大変な/大変に/とても/とんでもないの意で多用するほか、一部で「くたびれる」の意でも用いる(「しんどい」普及以前は広く用いた)。大変に/とてもの意で用いる際、本来の連用形「えろう」よりも「えらい」が多用される。 (例)えらい遠いとこまで行ってえらなったわ(とても遠いところまで行ってくたびれたよ) えろうすんまへん=えらいすんまへん(どうもすみません)
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えんりょのかたまり【遠慮の塊】 - おかずの最後の余り物。互いに遠慮し合ってなかなか箸が付かないことから。
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おいえ - 座敷。台所を指すことも。「御上」の転という。「おいえさん」で(町家の)奥さんの意。 (例)おいえへ上がっとくれやす(座敷へお上がり下さい)
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おいでやす【御出でやす】 - 歓迎の意を表す挨拶言葉。より丁寧で幾分改まった表現に「お越しやす」がある。
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おいど【御居処】 - お尻。女房言葉由来。
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おおきに/おおけに【大きに/大けに】 - 大いに。感謝の意を表す挨拶言葉としても用いるが、これは「大きにありがとう」などの後略。
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おかん、おとん - 「お母さん」「お父さん」のくだけた言い方。
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おことおお/おことう(さん)【御事多(さん)】 - (大晦日など)仕事納めの挨拶言葉。相手の年末の多忙に対するねぎらいと敬いを表す。
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お…さん - 京都を中心に、「お芋さん」「お粥さん」「お豆さん」など身近な名詞への敬称付けが盛んである。女房言葉を庶民が応用したものという。「お…さん」だけでなく「うんこさん」「飴ちゃん」などの例もある。
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おしピン【押しピン】 - 画鋲。
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おちょくる - からかう。小馬鹿にする。
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おっさん - 平板だと「おじさん」のくだけた言い方、「お」にアクセントを付けると「和尚さん」のくだけた言い方。 (例)おっさんが来はるで(和尚さんが来られるよ)
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おとつい - 一昨日。「遠つ日」の転。
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おはようおかえり(やす)【御早う御帰り(やす)】 - 相手の出立を見送る際の挨拶言葉。「早く帰って来てください」の意であり、「さっさと帰ってください」ではない。
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おぼこい - 幼い。子供らしい。あどけない。うぶな。「産子」の転「おぼこ」の形容詞形。
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おもろい - 面白い。
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おやかましさん/おやかまっさん【御喧しさん】 - 他家を辞する際の挨拶言葉。
- ○かいせい【回生】 - 大学○年生。元は京都帝国大学の用語だが、関西一円の学生言葉となっている。
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かしわ【黄鶏】 - 鶏肉。在来のニワトリの羽の色がカシワの葉の色(茶褐色)に似ることから。
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がしんたれ【餓死垂れ】 - 意気地無し。甲斐性無し。能無し。
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カッター(シャツ) - ワイシャツ。狭義では学生用シャツを指す。ワイシャツ#日本語での呼び名についても参照。
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かなん【適ん/叶ん/敵ん】 - 嫌だ。やり切れない。堪らない。「かなわん」の略。「かなへん」とは言わない。
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かまへん/かめへん【構へん】 - 構わない。「かまわへん」の略。「かまん」とは言わない。
- ×がめつい - 大阪弁と認識されがちな語彙だが、実際は麻雀用語「がめる」にとある方言を掛け合わせた、劇作家菊田一夫の造語。大阪を舞台とする演劇『がめつい奴』(1959)で広まった。
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かんこくさい【紙子臭い】 - 焦げ臭い。きな臭い。
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かんてき - 七輪。転じて、癇癪。 (例)かんてき者。(癇癪持ち)
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かんと(う)だき【関東煮/関東炊き】 - 煮込みおでん。「おでん」は元々田楽を指し、東京から伝わった煮込みおでんと区別するため生まれた言葉だという。なお台湾でもおでんは「關東煮」と書く。
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き(が)わるい【気が悪い】 - 感じが悪い。嫌な感じ。
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ぎょうさん【仰山】 - 数量・程度が甚だしい様子。「ようさん」とも(「ようけ」との混合か)。
- (お)くど(さん) - 竈。「へっつい(さん)」とも。
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けったい - 奇妙。変。不思議。おかしい。「卦体」の転という。
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けったくそ(が)わるい【けった糞が悪い】 - 癪に障る。忌々しい。気味が悪い。「けった糞」は「けったい」の派生語。
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ごあさって【五明後日】 - 「今日」から数えて五日目、つまり「しあさって」の翌日。東京では「やのあさって」。ちなみに「しあさって」で「あさっての翌日」を指すのは関西から東京に伝わった用法である。
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こうと【公道】 - 質素で地味だが上品さを兼ね備えている様子。 (例)こうとなお部屋どすなあ(質素ななかに上品さのあるお部屋ですなぁ)
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こける【転ける】 - 転ぶ。倒れる。他動詞形は「こかす」。
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こそばい/こしょばい - くすぐったい。かゆい。「こそばゆい」の略。名詞形「こそぼる」で「くすぐる」の意。
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ごつい - でかい。強い。いかつい。ひどい。1970年代以降、とても/かなりの意でも用いる。 (例)ごっつやばい(=かなりやばい)
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ごんた【権太】 - 腕白小僧。やんちゃ坊主。強めた言い方は「ごんたくれ」。人形浄瑠璃『義経千本桜』の登場人物名から。
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さし【差し】 - 物差し。定規。
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さぶいぼ【寒疣】 - 鳥肌。ぞっとした時のものは「ぞぞ毛」とも。 (例)あー、さぶいぼが出た(あー、鳥肌が立った)
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さら【新/更】 - 新しいこと/もの。共通語でも「更地」「まっさら」などの表現に残る。 (例)さらの皿(新品の皿)
- さらぴん - 「さら」を強めた言い方。「ぴん」の語源としては、「品」説とポルトガル語のpinta説がある。
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しい - 「する」の連用形名詞化。…しがちな人。…な人。「要らんことをする」→「いらんことしい」や「ええかっこをする」→「ええかっこしい」や「真似をする」→「まねしい」など、あまり良い意味では用いない。
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しばく - 叩く。引っぱたく。バブル期頃には「…を飲食しに行く」の意で用いるのが流行した。 (例)茶ぁしばけへん?(お茶しない?)
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しゃあない/しやない - しょうがない。仕方がない。「仕様(が)ない」の転。
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じゃまくさい【邪魔臭い】 - 面倒臭い。 (例)邪魔臭い仕事やなぁ(面倒臭い仕事だなぁ)
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じゅんさい【蓴菜】 - 捉えどころが無い。転じて、どっちつかず。でたらめ。いい加減。ジュンサイはぬめりがあって箸で掴みにくいことから。 (例)じゅんさいなことすな(いい加減なことをするな)
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しょうもない/しょうむない【仕様も無い】 - つまらない。おもしろくない。くだらない。
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しるい/しゅるい【汁い】 - 水気が多く、湿っている様。じゅくじゅくしている。「じるい/じゅるい」とも。 (例)雨で道がじゅるいなあ(雨で道がぬかるんでるなあ)
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しんきくさい【辛気/心気臭い】 - じれったい。苛立たしい。まどろっこしい。
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しんどい - 疲れる。苦しい。「辛労」の転「しんど」の形容詞化という。 (例)家計がしんどいわ(家計が苦しいよ)
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すい(い)【酸い(い)】 - すっぱい。共通語でも「酸いも甘いも…」の慣用句に残る。
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すかたん - まぬけ。とんちんかん。見当違い。なお「まぬけ」も関西から広まった表現である。
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すこい - ずるい。狡猾。「こすい」の倒語。
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ずっこい - ずるい。「すこい」と「ずるい」の混合か。
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ずつない/じゅつない【術無い】 - なす術がなくて辛い。苦しい。古語「ずちなし」の転。 (例)気ずつないなぁ(心苦しいなぁ)
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せえだい - 精々。大いに。「せえざい」などとも。「精を出して」あるいは「精際」(やっと、精々)の転と考えられる。 (例)せえだい気張りや(大いに頑張りなさいよ)
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せ(っ)たらう【背たらう】 - 背負う。
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せんど【千度】 - 何度も。たびたび。転じて、大層。ひどく。 (例)せんど言わすな!(何度も言わせるな!)
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たく【炊く/焚く】 - 煮る。炊飯以外にも用いる。 (例)夕飯は大根の炊いたんやで(夕飯は大根の煮物だよ)
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だぼ - 馬鹿。「あほ」よりもキツイ言い方。播磨・神戸で用いる。
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ちゃいする - 〔幼〕捨てる。 (例)そんなばばいもんちゃいし(そんなばっちいものはポイしなさい)
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ちょう/ちょお - ちょっと。当然ながら「超」とは無関係。 (例)ちょお待ってえな(ちょっと待ってよ)
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ちょ(う)ける【嘲ける】 - ふざける。おどける。名詞形「ちょけ」で「ふざけたことをする/言う人」の意。
- (お)つくり【御造り/作り】 - 刺身。
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つぶれる【潰れる】 - 「駄目になる」「平らに変形して壊れる」だけでなく、外見上の変形を伴わない破損・故障にも用いる。 (例)テレビが潰れおった(テレビが壊れやがった)
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てれこ - 逆さま。あべこべ。歌舞伎用語「手入れこ」から。
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てんご(う) - いたずら。悪ふざけ。冗談。
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でんぼ【出ん坊】 - 腫れ物。出来物。吹き出物。
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ど - 名詞・形容詞・形容動詞の語頭に付けて罵り・憎しみ・呆れなどを添える。転じて、単なる強調。 (例)どあほ どぎつい ど根性 どたま(=ど頭) ど派手 ど真ん中
- どつく/どづく【ど突く】 - 叩く。殴る。
- どつぼにはまる【ど壺に嵌る】 - 最悪の状態になる。やることなすこと全て悪い方向に向かう。「どつぼ」は肥溜めの意。元は芸人の楽屋言葉。
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どもならん/どんならん - 「どうにもならぬ」の転。どうしようもない。お終いだ。
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どんくさい【鈍臭い】 - 鈍い。手際が悪い。
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どんつき【どん突き】 - 突き当たり。
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ないない【無い無い】 - 〔幼〕片付ける。 (例)おもちゃないないしょうな(おもちゃをお片付けしようね)
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なおす【直す】 - 片付ける。元の場所に戻す。 (例)これ棚になおしといて(これ棚に片付けておいて)
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なんきん【南京】 - カボチャ。京都では「かぼちゃ」あるいは「おかぼ」。
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なんば【南蛮】 - トウモロコシ。「南蛮キビ」の後略。
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なんぼ【何ぼ】 - 幾ら。幾つ。どれほど。「何程」の転。 (例)なんぼのもんじゃい(なんだってんだい)
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にぬき【煮抜き】 - ゆで卵。特に固ゆで卵。
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ねき【根際】 - 側。近く。
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はばかりさん【憚りさん】 - 相手の労をねぎらう挨拶言葉。
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ばり - とても。かなり。元は九州北部や山陽地方の言葉だが、1980年代神戸を中心にして流行した。
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はんなり - 上品で華やかな様子。上品で爽やかな様子。 (例)はんなりしたお味やなぁ(上品で爽やかなお味だなぁ)
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びびんちょ - 〔幼〕汚らしい者を仲間外れにする時の囃し言葉。えんがちょ。「べべんちょ」などとも。
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ひりょうず【飛竜頭】 - がんもどき。ポルトガル語のfilhosに由来。「ひろうす」「ひりゅうず」などとも。
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フレッシュ
- コーヒーに入れる液体クリーム。
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べべた - びり。最下位。「べべ」「べべちゃ」や「どべ」(ど+べべた)などとも。
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ほかす【放下す】 - 捨てる。 (例)この書類ほかしといて(この書類捨てといて)
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ほげた【頬桁】 - 文句。(目上に対する)反論。物言い。原義は「頬骨」。 (例)ほげたを吐く(=文句を言う)
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ほたえる - ふざける。じゃれる。
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ほっこり - (一仕事を終えて)程よく疲れた様子。ほっとする様子。ほかほかと温かな様子。転じて、ふかし焼き芋を指すことも。近年、のんびりするなどの意で用いる者が増えている。 (例)ほっこりしたし、ほっこり食べて一服しょう(くたびれたし、焼き芋食べて一服しよう)
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ほる【放る】 - 投げる。捨てる。
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ぼん - 坊や。「坊」の転。「ぼんぼん」「ぼんち」などとも。 (例)ぼんぼん育ち(お坊ちゃま育ち)
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ぼんさんがへをこいた【坊さんが屁を放いた】 - 〔幼〕だるまさんがころんだ。「においだら臭かった」と続ける。
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ほんま【本真】 - 本当。実際。「本間」は誤字。
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まいど【毎度】 - 大阪の商業社会で広く用いる挨拶言葉。
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マクド - マクドナルドの略。マクドナルド#呼称も参照。ミスタードーナツの略「ミスド」に影響されたものか。
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まったり
- まろやかでこくのある味わい。じっくりと。くどくどと。1990年代以降、のんびり/ゆったりした様子の意で用いる者が増えている。
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まんまんちゃん - 〔幼〕仏様。神様。地域によっては月なども指す。「南無阿弥陀仏様」の転。お辞儀を表す「あん」を後ろに付けると、神仏に対する祈りの動作を表す。 (例)お仏壇にまんまんちゃんあんせんと(お仏壇にお祈りしないと)
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みずくさい【水臭い】 - 水っぽい。塩気が足りない。転じて、よそよそしい。
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みずや【水屋】 - 食器棚。台所全体を指すことも。
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めっちゃ - とても。超。「めちゃくちゃ」の略で、1970-80年代以降急速に広まった。「めっさ」などとも。同様の語に「むちゃくちゃ」の略「むっちゃ」がある。
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めばちこ【目ばちこ】 - 麦粒腫。ものもらい。京都周辺では「め(い)ぼ」(目疣)。
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めんちきる【めんち切る】 - ガンをつける。睨みつける。「目ん玉切る」→「めんた切る」と経て成立したという。
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モータープール - 駐車場。パーキング。進駐軍の用語をハイカラ好きの大阪人が真似たのが始まり。ただし英語での本義は「配車場に待機する車群」。中部地方(金沢・静岡など)以西で広く用いる。
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もむない/もみない - 美味しくない。まずい。「旨うもない」あるいは「旨みがない」の転という。大阪周辺の言い方。
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やつす【俏す/窶す】 - おめかしする。原義は「高貴な人が素性を隠すためにみすぼらしく装う」。名詞形「やつし」で「めかし屋」の意。もとは歌舞伎界の隠語で、江戸時代に町人層で流行語として広まったもの。
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ややこしい - 煩雑だ。厄介だ。面倒だ。紛らわしい。怪しい。「赤ん坊」を意味する「ややこ」の形容詞化。赤ん坊は世話をするのが面倒で大変ということから。「ややこい」などとも。
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やんぺ/やんぴ - 物事をやめる時の掛け声。主に子供が用いる。「止め」の転か。 (例)もうやーんぺ(=もうやーめた)
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よ(う)け - 数量が甚だしい様子。たくさん。「余計」の転。
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よろしゅうおあがり(やす)【宜しゅう御上がり(やす)】 - 「拙い食事を十分に召し上がって下さいました」の意で、「ご馳走様」に対する語。「十分に召し上がって下さい」の意で「いただきます」の後に用いる家庭もある。
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レーコ(ー) - アイスコーヒー。「冷コーヒー」の略。「コールコーヒー」(cold coffeeの転)とも。昭和の流行語。同様の語として「レスカ」(レモンスカッシュ)、「ミーコ(ー)」(ミルクコーヒー)など。
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わや - 滅茶苦茶。道理に合わない。台無し。駄目。「枉惑」の転「わやく」の派生。「わやくちゃ」「わやくそ」などとも。
フィクションと近畿方言
近畿方言は文学・ドラマ・映画などフィクションの世界でも見聞きでき、関西が舞台でないものでもしばしば用いられる。
漫画や
アニメではキャラクター要素のひとつとして定着し、関西出身の
声優が地の言葉で活躍している(
参考リンク)。海外の文学や映画作品の方言場面の邦訳に当てられることもある(韓国映画『
友へ チング』など)。
しかしフィクションでの近畿方言は、誤ったイントネーションや大袈裟な誇張など不自然な
似非方言であることが多く、また道化役や主人公と対立する役の
役割語とされやすい。そのため、近畿方言話者にとって違和感や不快感の対象となることがしばしばある。
もちろん似非ばかりということはなく、近畿方言話者自身による描写は基本的に正確である。近畿方言話者でなくとも、大阪出身者に校正をさせてまで登場人物の大阪弁の正確さを追求した
谷崎潤一郎(東京出身)の例もある。ただし活字では方言の微妙なニュアンスは表現しにくく、近畿方言話者でも自然な近畿方言の再現は難しい。例えば、大阪弁による恋愛小説『感傷旅行』を著した
田辺聖子は、柔らかな大阪弁を表現するのに「したりイな」のような表記の工夫を試みている。
脚注
参考文献
- 前田勇 (1965)『上方語源辞典』(東京堂出版)
- 井上史雄ほか (1996)『日本列島方言叢書 (13) 近畿方言考』(ゆまに書房、ISBN 4896688368)
- 日本放送協会 (1966)『全国方言資料 第4巻 近畿編』(日本放送出版協会)
- 中井幸比古編 (2002)『京阪系アクセント辞典』(勉誠出版、ISBN 4-585-08009-0)
- 前田勇 (1949)『大阪辯の研究』(朝日新聞社)
- 井之口有一・堀井令以知 (1992)『京ことば辞典』(東京堂出版、ISBN 4-490-10305-0)
- 井上史雄・鑓水兼貴 (2002)『辞典〈新しい日本語〉』(東洋書林、ISBN 978-4887215320)
- 藤原与一 (1996)『日本語方言辞書―昭和・平成の生活語―』(東京堂出版、ISBN 978-4490104288)
その他関連書籍
- 堀井令以知 (1999)『上方ことば語源辞典』(東京堂出版、ISBN 4490105177)
- 大阪女子大学国文学研究室 (1992)『上方の文化―上方ことばの今昔』(和泉書院、ISBN 4870885514)
- 前田勇 (1964)『近世上方語辞典』(東京堂出版)
- 牧村史陽 (1984)『大阪ことば事典』(講談社 講談社学術文庫、ISBN 4061586580)
- 尾上圭介 (2004)『大阪ことば学』(講談社 講談社文庫、ISBN 4062747901)
- 山下好孝 (2004)『関西弁講義』(講談社 講談社選書メチエ、ISBN 4062582929)
- 真田信治、岡本牧子・氏原庸子 (2006)『聞いておぼえる関西(大阪)弁入門』(ひつじ書房、ISBN 978-4894762961)
外部リンク
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