都市伝説(としでんせつ、)とは、
近代あるいは
現代に広がったとみられる
口承の一種である。
都市型伝説(としがたでんせつ)ともいう。
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具体的な都市伝説の事例については、都市伝説一覧を参照
概要
都市伝説の概念は、
フランスの
社会学者である
エドガール・モラン (Edgar Morin) が1969年に著書 ''La Rumeur d'Orléans'' において最初に使った(フランス語では légende urbaine)。
1979年の初頭には、
アメリカの
民俗学者である
ジャン・ハロルド・ブルンヴァン (Jan Harold Brunvand) がアメリカ民俗学の学会誌の書評で使った。 1980年代になると、ブルンヴァンがこの現象に対する著書を発表するようになり、対外的にもよく知られるようになった。
ブルンヴァンによると、都市伝説とは「民間
説話」 (folk narratives) の下位分類である「伝説」 (legends) に属し、「伝説」とは「口承の歴史」 (folk history) あるいは「擬似的な歴史」であるとされる。
都市伝説は、民間における「普通の人々」によって語られる。「都市-」 (urban) という
形容詞は、「都市の、都会の」というような地域を示しているのではなく、
近現代になって生じたことを指しており「都市化した」という意味で使用されている。その意味では、伝統的文化に由来する伝説や、ある社会に古くから永く伝承されてきた伝説を指すものではなく、
説話の舞台設定が地方であっても都市伝説と呼ばれる。
一部には口承の他に、
テレビ、
ラジオなどの
マスメディアや、
インターネットを通して広がることもあり、これは古くからの伝説にはない特徴である。インターネット掲示板・
ブログ等に由来するものは、とくに
ネットロアと呼ばれることもある。ネットロアとは「インターネット」(< inter
net)と「フォークロア」(< folk
lore)から造語された
和製語である。
名称
「都市伝説」という用語が提唱されるまでは、この現象を指し示すために様々な用語が使われていた。"urban belief tales"(都市で信じられる話)、"urban narratives"(都市の体験談)と呼ぶ者もあり、必ずしも「都市」で広まるとは限らないこともあり、伝統的な民話に対して "modern legends"(近現代の伝説)ともいう。社会学者や民俗学者は同様の意味で "contemporary legends" と呼んでいる。
ブルンヴァンによれば、「都市伝説」の中の「伝説」とは、通常の「伝説」という言葉とは若干意味が違い、「話し手がそれを実際にあったできごととして語っている」ことを指すという。ブルンヴァンはまた、この「伝説」を「『世間話』という口承文芸の雑然としたオモチャ箱的ジャンル」とも表現している。
なお、
日本放送協会 (NHK) でも「都市伝説」と表現したことがある。
都市伝説の有する特徴
ニュース性
古くからの伝説とは異なる都市伝説の特徴としてそのニュース性がある。
ブルンヴァンによれば、
- (都市伝説は、)より多くの意味を含んでいきながら、魅力的な形で私達に提示される「ニュース」なのだ。この様々な断片からなるアピールを持たなければ、その他の娯楽ひしめく現代社会において、伝説は耳をかたむけてもらえなくなるだろう。伝説は、テレビの夜のニュースのように、いきいきとして「事実に即したもの」(factual)として生き残ってきた。また、それは毎日のニュース放送のように人々の死や怪我、誘拐や悲劇、そしてスキャンダルにかかわる傾向を持っている。
それゆえ、都市伝説にはある種スキャンダラスな次のような話題が含まれることが多い。
都市伝説のこうした要素は、「『もしかしたら本当に起こったのかもしれない』、奇怪で、おっかない、危険を含んだ、やっかいなできごとについて知りたい、理解したいというわたしたちの欲求を満たすもの」(ブルンヴァン)である。
しかし、都市伝説は必ずしもこうした「アングラな」スキャンダルのみを扱うものではなく、
を含む、ジョーク的で興味本意なスキャンダルをも取り扱う。
真実味
都市伝説は真実味と不安とを加えるため、伝説中の登場人物や地名には話し手や聞き手に取って身近なものが選ばれる。そして伝説は、実際に、"friend of a friend"(FOAF, いわゆる「友達の友達」)などの身近な人に起こった真実として語られたり、「これは新聞に載っていた話」として紹介されたりする。
多くの都市伝説においては、話の面白さ・不気味さが主であり、伝説中の
人物・
企業・
地名は、話し手や聞き手に身近なものへところころと変化する。
例えば『
ファストフード店の
ハンバーガーには
ミミズ肉(あるいは巨大な鼠)が使われている』『
ファストフード店のフライドチキンには3本足の鶏の肉が使われている』等という都市伝説では、あるときは「ファストフード店」として『
マクドナルド』が選ばれるが、他のときには『
ロッテリア』や『
ウェンディーズ』などの他のファストフード店が選ばれる。ときにはより具体的に、『駅前のマクドナルド』、『交番そばのロッテリア』などのように個々のファストフード店が標的に選ばれるときすらある。上記の理由から、知名度が高い人・企業についての都市伝説が多く存在していても、当該人物・企業が起源であるとは断定できない(→
ハンバーガーの肉を参照)。また、都市伝説の
カテゴリーには
陰謀論や
疑似科学、あるいはゴシップ、デマゴギー等も含まれることがある。陰謀論の定義と都市伝説のそれは似た部分とそうでない部分がある。
反証可能性を持たない陰謀論は都市伝説であるし、反証されたのに世間に流布し続けている陰謀論も都市伝説である。事実だった陰謀論は都市伝説ではない。
都市伝説は、常識的な感覚では突飛なものが多いので、合理的な説明が試みられて真実味が加えられる事がある。たとえば、「都市の
下水道に巨大な
ワニが生息している」という都市伝説では、ワニの存在は、飼いきれずにトイレで流された
ペットのワニが生き延びて増殖したものと説明されている。
都市伝説の起源
一見新しそうに見える都市伝説であっても、その起源が古くからの
神話や
民話にあったり、あるいは、より古い別の都市伝説の焼き直しだったりする事が多いことが、ブルンヴァンら研究者により指摘されている。
都市伝説には起源や根拠がまったく不明なものも多いが、何かしらの根拠を有するものもある。特定の(大抵は何でもない)事実に尾ひれがついて、伝説化することが多い。たとえば「
東京ディズニーランドの下には巨大地下室があり、そこで賭博等の行為が行われている」という都市伝説は、同施設が実際に巨大な貯水用地下室を持っていることが起源の一つになっている。補足だが、賭博場は地下ではなくランド内の『ワールドバザール』の横という説もある。(実際そこには
クラブ33という会員制の場所がある。もちろん賭博ではなく単なるレストランである。)
ソニーの製品は保証期間が切れた直後に故障するよう設計されているという
ソニータイマーの場合、運悪く故障した顧客の不満、あるいはライバル企業からの情報操作などが原因と見られる。それほど故障するのであれば世界的ブランドに成長することは不可能であろう。
この都市伝説は爆発的なヒットとなった同社のゲーム機『プレイステーション』が熱に弱く、購入1年で熱暴走により故障すると言ったケースが多発した時期にインターネットの普及が重なった為、それまでは草の根レベルで語られていた噂が広く語られるようになったと思われる。
都市伝説の伝播
都市伝説は、若者、都市生活者、高等教育を受けた人などの「普通の人々」によって語られる。
都市伝説の伝播に重要な要素として、それが
真実として語られる、というものがある。ブルンヴァンによれば、『「これは本当のことだ」として語られるのは、伝説が形成される代表的な回路』であり、『この事実は古くからの民話であろうと、都市伝説であろうと変わらない』。都市伝説は、『古くからの民話と同じように、大真面目に語られ、口から口へと広がっていく』。伝説とは、ブルンヴァンの言葉を借りれば、口承の歴史(Folk History)、すなわち擬似的な歴史なのである。
都市伝説はマスメディアによっても広められることがある。これは古くからの民話にはない重要な要素である。また、根拠のない
噂を新聞やテレビの情報番組が「事実」として誤報してしまう事で、噂が都市伝説に発展することがある。
存在しない話を「実話」として新聞や雑誌が紹介してしまった例としては、『スキー』誌1983年12月号が「裸でスキー」の都市伝説を「『モントリオール・ガセット』誌に載った前代未聞のへま」として紹介した(『メキシコから来たペット』より)ことなどが挙げられる。
また、マスメディアが報道した内容によって、直接の損害が発生しなければ、当事者や関係者もすぐに訂正、謝罪をマスメディアに求めないので、「誤報」が広まったままとなる要因の一つと言える。
新聞やテレビが都市伝説を都市伝説として紹介した時に、読者・視聴者が勝手に「事実」だと誤解してしまい、事実として周囲に伝達していくことで、都市伝説が爆発的に流布することがある。
マスコミの報道により、虚構が事実として広まった著名な例として、
オーソン・ウェルズによるラジオドラマ『
火星人襲来』がある。番組の始めで「これはドラマだ」と明言されていたにも関わらず、聞き逃した人も多く、これが実話だと信じてしまった。
都市伝説は、報道等を契機としてそれを信じる人が増えると、信奉者からの伝播によりますます流布・定着するという傾向がある。
また、真実よりも扇情性を重んじる一部メディアでは、「これは実話でない」という記述をあえて見付けにくい場所に載せて読者を煽るという手法を取る事があり、都市伝説の起源となる場合がある。
都市伝説の派生
対抗的都市伝説
ある都市伝説が嘘である事を示す為に流れる噂話や、この都市伝説はこれが元の話とさも事実のように流れる話を指す。対抗神話とも呼ぶそうだが、一般的ではない。
都市伝説はあとから、実際に起きた事件、事故の話がプラスされて流れる場合もあり、これが元ネタといわれても、
所詮はこれも都市伝説に過ぎず、起源などあいまいなことが多い。
具体例としては、「電子レンジに猫を入れて殺してしまったお婆さんが電子レンジの製造会社を訴えた」という話について、「あの話は法律学の先生がジョークで挙げた例が広まった」、「あの話は元々は
PL法を説明する際の例え話」とするなど、誰も証明できないが、もっともらしい起源が示されることが多い。また、企業・商品に対する悪い都市伝説の起源は「あの話はライバル会社が流した嘘」とされることが多い。例えば、昭和33年ごろに流行した
フラフープは「
腸捻転や卵巣破裂の原因になる」という噂によって急速にブームが沈静化したが、これはフラフープ以外の玩具の売れ行きを心配したおもちゃメーカーが流したものとか、フラフープを路上ですると交通の妨げになるとして警察が意図的に流したもの、とされる。
現代妖怪
「
口裂け女」「
人面犬」「
トイレの花子さん」等は「都市伝説」ではなく「
現代妖怪」という別のカテゴリーとして分類・研究すべきであるという意見を提唱する研究者も、主流派ではないが一部に存在する。現実問題としてもともと「都市伝説」と言う言葉の定義があいまいだったためにその意味する範囲が際限なく広がっている現状があるのだが、新語の創設・使用に際してはその轍を踏む事のないように慎重であることが求められるだろう。
注
参考文献
- ジャン・ハロルド・ブルンヴァン(日本語版は全て新宿書房より刊行)
- 『消えるヒッチハイカー―都市の想像力のアメリカ』 ISBN 4880081167 ISBN 4880082392
- 『ドーベルマンに何があったの?―アメリカの「新しい」都市伝説』 ISBN 4880082406
- 『チョーキング・ドーベルマン』 ISBN 4880081280 の改題新装版
- 『メキシコから来たペット―アメリカの「都市伝説」コレクション』 ISBN 4880081477
- 『くそっ!なんてこった 「エイズの世界へようこそ」はアメリカから来た都市伝説』 ISBN 4880081698
- 『赤ちゃん列車が行く』 ISBN 4880082414
関連項目
外部リンク
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