脳梗塞 [Stroke] [被リンク数: 214]

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脳梗塞(のうこうそく、cerebral infarction、別名:脳軟化症(のうなんかしょう))とは、を栄養する動脈の閉塞、または狭窄のため、脳虚血を来たし、脳組織が酸素、または栄養の不足のため壊死、または壊死に近い状態になる事をいう。また、それによる諸症状も脳梗塞と呼ばれる事がある。なかでも、症状が激烈で(片麻痺意識障害失語など)突然に発症したものは、他の原因によるものも含め、一般に脳卒中と呼ばれる。それに対して、緩徐に進行して痴呆(脳血管性痴呆)などの形をとるものもある。
日本人の死亡原因の中でも多くを占めている高頻度な疾患である上、後遺症を残して介護が必要となることが多く福祉の面でも大きな課題を伴う疾患である。ちなみに「脳軟化症」の名の由来は、脳細胞は壊死すると溶けてしまうため(「融解壊死」という)こう呼ぶ。

分類

脳梗塞は、血管が閉塞する機序によって血栓性・塞栓性・血行力学性の3種類に、また臨床分類としてアテローム血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓・ラクナ梗塞・その他の脳梗塞の4種類に分類される(NINDS: National Institute of Neurological Disorders and Stroke米国国立神経疾患・脳卒中研究所による分類)。

アテローム血栓性脳梗塞

動脈硬化によって動脈壁に沈着したアテローム(粥腫)のため動脈内腔が狭小化し、十分な脳血流を保てなくなったもの。また、アテロームが動脈壁からはがれ落ちて末梢に詰まったものもアテローム血栓性に分類される。
アテロームは徐々に成長して血流障害を起こしていくことから、その経過の中で側副血行路が成長するなどある程度代償が可能で、壊死範囲はそれほど大きくならない傾向がある。
また、脳梗塞発症以前から壊死に至らない程度の脳虚血症状(一過性脳虚血発作、TIA)を起こすことが多く、このTIAに対する対処が脳梗塞の予防において重要である。
リスクファクターは、喫煙肥満糖尿病脂質異常症高血圧など。予防は、抗血小板薬(アスピリン・チクロピジン・クロピドグレル・シロスタゾール・ジピリダモールなど)によってアテロームの成長を抑制すること、高血圧・糖尿病・脂質異常症は原疾患に対する加療・コントロールを行うこと、また飲水を心がけて血流を良好に保つことである。
アテローム血栓性脳梗塞もいくつかの機序によって起こることが知られている。一般的に血栓症は動脈硬化による閉塞である。心筋梗塞の場合はプラークの破綻によって急激に冠動脈が閉塞する場合がほとんどだが脳梗塞の場合はいくつかの機序が知られている。まずは心筋梗塞と同様にプラークが破綻する場合がある。粥腫に富み、線維性皮膜が薄い場合は不安定プラークといい、こういったプラークは容易に破綻し、血栓による動脈閉塞をおこす。血管が閉塞、狭窄するとその灌流域が血液途絶を起こし皮質枝梗塞を起こす。狭窄部が急激な血管閉塞を起こすと心原性脳塞栓と類似した脳梗塞が発生する。こういったことは頭蓋外の内頸動脈や頭蓋内の脳主幹動脈に多(血行力学性によるもの参照)い。また、血管の閉塞や高度の狭窄によって血液供給の境界領域(watershed)が乏血状態となり、さらに血圧低下などの血行動態的要因が加わり梗塞が生じる。こういったことは中大脳動脈や内頚動脈に多い。内頚動脈に高度狭窄があり、支配領域の脳血流量低下を伴っている場合には、表層前方では前大脳動脈・中大脳動脈皮質枝の境界、後方では中大脳動脈・後大脳動脈皮質枝の境界領域が最も乏血状態に陥りやすいので梗塞をきたしやすい。深部では中大脳動脈皮質枝と穿通枝の境界領域に起こりやすい。この機序によっておこる場合は発症後段階的階段状の進行、悪化が見られる(progressive stroke)。発症時間は夜に多く、起床時に気がつくことも多い。もともと極めて慢性に進行してきたと考えられ、こういった梗塞をおこす患者は側副血行路が豊富にある場合が多く、代償が可能な間は臨床症状が乏しいこともある。他には動脈硬化が原因の脳梗塞としてartery to artery embolism(A to A)というものがある。内頚動脈や椎骨動脈のアテローム硬化巣から血栓が遊離して末梢の血管を閉塞する。皮質枝にも穿通枝にも塞栓を起こしえる。心原性脳塞栓と同様活動時突発性発症が見られやすい。画像上は典型的には皮質枝、即ち大脳皮質MRI拡散強調画像 (DWI) で高信号域を認め、散在性小梗塞巣といった形を取りやすい。もちろん小型というのは他のアテローム血栓性脳梗塞よりはということでラクナ梗塞よりは大型の病変となる。アテローム硬化には好発部位がある。基本的には日本人には中大脳動脈に多い。しかし近年は欧米と同様、頸部内頸動脈の起始部に最も多くなっている。他の好発部位としては内頚動脈サイフォン部、椎骨動脈起始部、頭蓋内椎骨動脈、脳底動脈である。
アテローム血栓性脳梗塞は他の病型よりも一過性脳虚血発作が先行しやすいと言われている。閉塞動脈の支配領域の症状を繰り返しやすいという特徴がある。内頸動脈病変では一過性黒内障が有名である。これは眼動脈、網膜中心動脈領域の虚血が起こり、患側の視力が一過性に消失する。典型的にはカーテンが目の前に降りて行くように暗くなると患者は訴える。椎骨動脈では回転性めまいや嘔吐、構音障害が起こりやすい。発作の頻度が重要であり、短時間に頻回起こっている場合はcrescend TIAと呼ばれ、主幹動脈の高度狭窄の存在が示唆される、持続時間の延長は脳梗塞の危険が切迫していると考えられる。初回TIAが起こってから 1か月以内が最も脳梗塞が起こりやすいといわれているため、入院精査と治療が必要と言われている。アテローム血栓性のTIAならば抗血小板薬を、心原性やcrescendo TIAでは抗凝固療法を行うことが推奨されている。
脳神経系の障害は上位ニューロン障害を起こすと内頸動脈系でも起こりうる。中心前回などが中大脳動脈に還流されるからである。

塞栓性(脳塞栓症)(embolism)

脳血管の病変ではなく、より上流から流れてきた血栓(栓子)が詰まることで起こる脳虚血。それまで健常だった血流が突然閉塞するため、壊死範囲はより大きく、症状はより激烈になる傾向がある。また塞栓は複数生じることがあるので、病巣が多発することもよくある。原因として最も多いのは心臓で生成する血栓であり、そのほとんどは不整脈心房細動)に起因する心原性脳塞栓である。このほか、ちぎれた腫瘍が流れてきて詰まる腫瘍塞栓や脂肪塞栓・空気塞栓などもこれに含まれるが、稀な原因である。シャント性心疾患(卵円孔開存)なども原因となる。
脳塞栓症では高率に(30%以上)出血性梗塞を起こしやすい。これは閉塞後の血管の再開通によって、梗塞部に大量の血液が流れ込み、血管が破綻することによりおきる。心原性塞栓症の際に抗血小板療法や抗トロンビン療法が禁忌である理由はこれを起こさないためである。
心房細動は無症状のことも多く心機能もそれほど低下しないため、特に無症状の場合は合併する脳塞栓の予防が最も重要になる。心房が有効に収縮しないため内部でよどんだ血液が凝固して血栓となるが、すぐには分解されないほどの大きな血栓が流出した場合に脳塞栓の原因となる。特に流出しやすいのが心房細動の停止した(正常に戻った)直後であるため、心房細動を不用意に治療するのは禁忌となる(ただし、心房細動開始後48時間以内なら大きな血栓は形成されておらず安全とされる)。
予防には抗凝固薬ワルファリン)を用いる。抗血小板薬と併用することで予防効果が高まるという明確な根拠はなく、現在は抗凝固療法単独の治療が行われている。

ラクナ梗塞

ラクナ梗塞は本来、直径15mm以下の小さな梗塞を意味する。しかし、この梗塞は上記の2種類とは違った機序が関わっているとみられていることからそれ自体がひとつの分類となっている。
主に中大脳動脈や後大脳動脈の穿通枝が硝子変性を起こして閉塞するという機序による。ただし中大脳動脈穿通枝のうち、レンズ核線状体動脈の閉塞では、線状体内包梗塞と呼ばれる径20mm以上の梗塞となることがあり、片麻痺や感覚麻痺・同名半盲などの症状が現れることもある。後大脳動脈穿通枝の梗塞では、ウェーバー症候群やベネディクト症候群(赤核症候群)を起こすことがある。リスクファクターは高血圧。症状は片麻痺や構音障害などであるが、軽度または限定されたものであることが多く、まったく無症状であることも多い。意識障害を認めることはほとんどなく、失語症、半側空間無視、病態失認といった神経心理学的な症候(皮質症候)も通常は見られない。
多発性脳梗塞とよばれるもののほとんどはこのラクナ梗塞の多発であり、多発することで認知症パーキンソニズム(脳血管性パーキンソン症候群)の原因となることがある。
ラクナ梗塞であるのかアテローム血栓性脳梗塞であるのかは、ラクナ梗塞のタイプを知っていると分かりやすい。症状が軽い、梗塞巣が小さいだけでは鑑別が難しくなることもあるからである。特徴としては感覚障害と麻痺が同時に存在しないタイプがラクナ梗塞ではありえるということである。
視床梗塞では手掌・口症候群というものが知られている。視床外側に病変があることが多く、一側の手掌と口角周囲に限局したしびれ感、異常感覚をきたすものである。視床の核内で手掌と口角の近くを支配する部位が隣接するため生じると考えられている。ラクナ梗塞以外では視床症候群が起きることが多い。これも病変の大きさの問題と考えられている。

血行力学性(hemodynamic)によるもの

一時的に血圧が下がったために、脳の一部が十分な血流を得ることができなくなって壊死に陥ったもの。血栓性や塞栓性では壊死しにくい分水嶺領域に発症することが特徴的である。分水嶺領域(Watershed Area)とは、どの動脈に栄養されているかで脳を区分した時に、その境目に当たる区域のことである。この部分は、一方の動脈が閉塞してももう一方から血流が得られるため動脈の閉塞に強い。しかし、動脈本幹から遠いため血圧低下時には虚血に陥りやすいのである。診断名ではアテローム血栓性脳梗塞になる。

解離(dissection)によるもの

動脈内膜の損傷により、内膜と中膜の間に解離腔が形成される。外傷でも起こるが自然にも生じる。解離のために動脈内腔が狭窄したり閉塞したり外膜に動脈瘤様の拡張をきたしたりする。近年は椎骨動脈系で多い。大したリスクのない若い人が突然の後頸部痛に伴って発症することが多い。ワレンベルグ症候群を呈することもよくある。心筋梗塞と大動脈解離は治療が大きく異なるが、脳動脈解離では治療は脳梗塞に準ずる。近年はステントなど外科的な治療も試みられており、特に慢性閉塞性血管障害ではよい適応となっている。

血管炎によるもの

抗リン脂質抗体症候群全身性エリテマトーデスによるものが若年性脳梗塞の原因として考えられている。

まとめ

心原性脳梗塞、アテローム血栓性脳梗塞では血栓融解療法が試みられている。しかし出血性梗塞のリスクがあるために発症から3時間以内でないと基本的には行わない。

症状

脳梗塞は、壊死した領域の巣症状(その領域の脳機能が失われたことによる症状)で発症するため症例によって多彩な症状を示す。症状から責任病巣を決定することができる(神経診断学)。
麻痺
運動の障害を意味し、もっとも頻度の高い症状が麻痺である。中大脳動脈の閉塞によって前頭葉の運動中枢が壊死するか、脳幹の梗塞で錐体路が壊死するかで発症する。
多くの場合は、片方の上肢・下肢・顔面が脱力または筋力低下におちいる片麻痺の形をとる。ただし、脳幹梗塞では顔面と四肢で麻痺側が異なる交代性麻痺を来すこともある。
感覚障害
感覚線維、または頭頂葉の感覚中枢が壊死することで出現する。感覚の鈍化または消失が起こるほか、慢性期には疼痛が出現することがありQOLへの影響が大きい。
失調
小脳または脳幹の梗塞で出現し、巧緻運動や歩行、発話、平衡感覚の障害が出現する。これに関連してめまいが出現することもある。
意識障害
脳幹の覚醒系が障害された場合などに意識レベルが低下するほか、広範な大脳皮質の破壊でもみられる。それがなくても、急性期脳の腫脹などによって全体的に脳の活動が抑制され、一過性に意識レベルが下がることがある。ラクナ梗塞で意識障害を来しにくいのは、梗塞範囲が小さいため腫脹など脳全体への影響が小さいことによる。
構音障害嚥下障害
喉頭・咽頭・の運動にも麻痺や感覚障害が及ぶことで嚥下や発声機能にも障害が出現する。構音障害は後述する失語とは違い、脳の言語処理機能は保たれながらも発声段階での障害のためにコミュニケーションが不十分となっているものである。嚥下障害は、摂食が不十分となって社会復帰を困難にしたり、誤嚥によって肺炎の原因となるなど影響が大きい。
嚥下・構音障害を起こすような咽頭・喉頭機能の障害は脳幹の延髄の障害に由来することから球麻痺と呼ばれる(延髄は球形)が、より上部から延髄へいたる神経線維の障害でも類似した症状がみられるため、これは仮性球麻痺と呼ばれる。
高次脳機能障害
失語や失認をはじめとした高次機能障害の出現することがあり、これは非常に多彩である。中でも、半側空間無視空間のうち左右どちらかが意識からはずれてしまう)が非常に多くみられる。これは大脳劣位半球頭頂葉でみられるものだが、右利きの人間の95%は劣位半球がにあることから、ほとんどは「右利きで左片麻痺」の患者にみられる症状であると言える。逆に失語は優位半球の障害でみられるもので、「右利きで右麻痺」の患者にみられることが多い。

経過

発症
脳梗塞の症状は徐々に進行して増強してくるものから突然に完成するものまで千差万別である。ただし、塞栓性のものは突然に完成することが多い。
発症時間で最も多いのが夜間から早朝にかけてである。これは、就寝中には水分をとらないために脱水傾向になることと関わっている。年間を通じてはに多い。夏は脱水、冬は体を動かさなくなることが発症と関わっている。
気付かれる症状として最も多いのが麻痺である。「体が傾いている」「立ち上がれなくなった」などの訴えで病院に搬送されてくることが多い。逆に、失語のみなどの一見奇異な症状では脳梗塞だと気付かれず医療機関への受診が遅れることもある。
急性期
脳梗塞の症状は急性期にもっとも強く、その後徐々に改善していく。これは、壊死に陥った脳組織が腫脹して、周囲の脳組織も圧迫・障害していることによる。腫脹が引いていくとともに、周囲の組織が機能を回復して症状は固定していくのである。ただし、腫脹や、壊死組織から放出されるフリーラジカルは周囲の組織をも壊死させる働きがあるためこれらを抑制することが機能予後の向上につながる。
急性期は血圧が高くなる。場合によっては(収縮期血圧で)200mmHgを超えることもある。これは、虚血部位に対して血流を送り込もうという生理的な反応であり、無理に降圧を図ってはいけない。(降圧しすぎると、梗塞範囲を広めるおそれがある)
降圧薬、不用意な頭位挙上は脳循環血流を悪化させ、再発や症候増悪をおこす。症状が安定するまで少なくとも24時間はベッド上安静とする。
亜急性期
軽症から中等症のものであれば、数日で脳の腫脹や高血圧は落ち着き、場合によってはほとんど症状が消失するまでに回復する。ただし、ある程度大きな後遺症が残った場合にはリハビリテーションを続けても発症前と同レベルまで機能を回復するのは非常に困難である。
慢性期
原因にもよるが、脳梗塞の既往がある人の脳梗塞再発率は非常に高い。そのため再発予防のための投薬を受け続ける必要がある。また、長期の後遺症としててんかんパーキンソニズムを発症することがある。

診断

神経内科または脳神経外科が行うが、発症後3時間以内の超急性期では迅速な対応が必要であり、救急科が行うことも多い。
身体所見(神経学的所見)
上記の巣症状のほか、上位中枢の障害を示唆する錐体路徴候腱反射の亢進、バビンスキー反射の出現)や眼球運動異常などから梗塞部位が推測できる。神経学的所見から脳梗塞(脳卒中)の客観的な重症度を記載する方法として、いくつかのスケールが提唱されている。最も簡便で臨床的に多用されているのはNIHSS(National Institute of Health Stroke Scale)である。これは超急性期の血栓溶解療法を実施する際には必須の項目となっている。
検査所見
一般的な血液検査上は特徴的な所見はないが、血栓性では血小板機能を調べると亢進していることがある。ただし、血液検査から高脂血症・糖尿病などの基礎疾患を評価する意義は大きい。超急性期の血栓溶解療法を実施する際には高血糖低血糖などの絶対禁忌項目があるため、血液検査は必須となる。
画像所見
X線CTでは、まず何よりも脳出血との鑑別が重要である。脳出血ではよほど小さなものでない限り超急性期から血腫が明確な高吸収域として確認できるからである。さらに脳梗塞では初期(早期)虚血変化(early CT sign)と呼ばれる所見がみられることがある。白質と皮質の境目が不明瞭になる、レンズ核が不明瞭となる、脳溝が狭小化するといった変化である。これらの変化が広範囲に見られる場合は、血栓溶解療法の治療適応外となるため、近年では初期虚血変化有無の判定が重要となっている。やや時間が経過すると、壊死した脳の腫脹がみられることがある。そして、壊死した組織は発症数日すると軟化してCT上暗くなるが、これらの所見はどれも発症急性期にははっきりしないものである。
MRIではより早期から所見を捉えることができる。T2強調画像で病変が高信号になる(細胞の腫脹をみている)のが発症約6時間でみられるほか、拡散強調画像(DWI)では高信号を約3時間後から認めることができるとされる。
血栓性の場合、頚部血管のエコーで、血管内壁の粥腫(プラーク)による狭小化を確認できることがある(高度な場合には外科的切除の対象になる)。エコーでは、頭蓋内血管を微小栓子(HITS)が流れているのを確認できることもある。

対応

脳梗塞の急性期には、腫脹とフリーラジカルによって壊死が進行することを阻止するのが第一となる。また、再梗塞も予防する必要がある。そのため、血栓性とみられる場合には抗凝固薬を用いながらグリセリン(グリセオール)やマンニトール等で血漿浸透圧を高めて脳浮腫の軽減を、発症24時間以内にエダラボン(ラジカット<img src=ペナンブラ(penumbra)と呼ばれる虚血部位と正常部の境界部位の血流保持も図られる。

血栓溶解療法

アテローム血栓や塞栓症の場合、発症直後(3時間以内)であり、施設の整った医療機関であれば血管内カテーテルによってウロキナーゼを局所動脈内投与する血栓溶解療法が可能である。
また、2005年10月からt-PAのうちアルテプラーゼ(遺伝子組換え)の静脈内投与による超急性期虚血性脳血管障害の治療について日本国内での治療も健康保険適応となった。1995年の米国の報告では予後改善効果も認められるが脳出血の副作用も6.4%と対照の0.6%より大幅に増えていた。日本での治験(J-ACT)では脳出血例5.8%(6/103例)であった。 心筋梗塞の治療でt-PAを使うときも承認前1.76%(7/398例)、市販後14例(14,360回投与中)の脳出血例が報告されている。脳梗塞専門病棟など整った施設に於いて慎重に適応を選び十分な説明と同意の元進められる治療法であろう。
米国においてもt-PAによる脳出血の死亡例は多く報告されており、判例に基づいた医療(Jurisprudence-Based Medicine)或いは「マスメディアに基づいた医療」の観点からは、「t-PA治療を行っても、行わなくても訴訟或いはマスコミの非難が待っている」という、まさに綱渡りを医療者に強いる認可であったと言える。

他の療法

薬物治療
発症して時間が経って血栓溶解療法適用外となったアテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞であれば、オザグレルナトリウム(抗血小板剤)・アルガトロバン(抗トロンビン薬、スロンノンHIなど)などを発症早期に投与する。ただし心原性塞栓症ではこれらは禁忌である。
開頭減圧術
70歳以下の患者で、進行性意識障害でCT上脳幹圧迫所見のある中大脳動脈潅流域を含む一側大脳半球梗塞の場合、薬剤による脳圧制御は困難で、開頭による外減圧術の必要がある。広範な脳梗塞の場合は著明な脳浮腫、第4脳室閉塞による水頭症などで脳ヘルニア、呼吸中枢の圧迫などが起こりえるので減圧が必要という考え方である。
血管治療
近年は血管内治療の進歩によりバルーンつきのマイクロカテーテルで血管を拡張する血管拡張術やステントを留置するステント留置術、詰まった場所までカテーテルを進め血管を拡張させる薬を注入する血管拡張術やその部位の血栓を溶かす薬を注入する血栓溶解療法などの脳血管内治療行われている。
;頸動脈病変
頸部内頚動脈狭窄症では薬物治療(抗血小板薬)との比較試験で手術の方が症候性、無症候性どちらであっても有意に次に起こる発作の予防効果があるとされている。症候性の場合はNASCET、ECSTというスタディが、無症候性の場合はACAS、ACSTというスタディが有名である。70%以上の狭窄や高度の潰瘍病変を有する患者で、全身麻酔に耐え、5年以上の生存が見込める患者では手術を考慮するべきである。高齢者(75歳以上)や手術のリスクが高い人、冠動脈疾患を合併する人ではケースバイケースとなる。また、内頚動脈閉塞症で血行動態によるTIAや脳梗塞を起こす患者の場合はバイパス手術が行われる場合もあるが、頸動脈病変で最もよくやられる手術は頸動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy,CEA)である。CEAが難しい症例は頸動脈ステント留置術(CAS)が行われる。具体的には高齢者(75歳以上)、心肺疾患、CEA後狭窄、高位病変、対側閉塞、放射線照射後などが良い適応である。2008年4月より保険適応となる。
;中大脳動脈病変
浅側頭動脈‐中大脳動脈吻合術というバイパス術が知られている。

機能予後

機能予後は、リハビリテーションをどれだけ積極的に実施できたかによるところが大きい。病床で安静にする期間をできる限り短くし、早期から日常に近い生活を目指すことが重要である。超急性期リハと呼ばれる、発症当日からのリハビリが最も有効であることが示されている。麻痺の回復過程では一部の筋肉を動かそうとすると複数の筋肉が動いてしまうという共同運動という現象がみられることが知られている。
急性期リハビリテーション
通常発症から2週間から1か月以内のリハビリテーションをいう。廃用症候群の予防が重要となる。
回復期リハビリテーション
身体機能の回復がピークに達するとき。
維持期リハビリテーション
生活支援が主になる。

慢性期の管理

再発予防のための抗凝固・抗血小板薬を使用する上で問題になるのが、出血性梗塞である。これは、壊死した血管に血流が再度流れ込むことで血管壁が破れ、脳出血に至った状態である。これは特に、広範な脳梗塞で問題となる。そのため塞栓性などの広範な症例では梗塞の進行停止を見極めてから慎重に開始し、その後もCTで出血の有無をフォローアップすることが欠かせない。
梗塞原因の特定は、その後の再発予防計画を立てていく上で非常に重要である。まずは既往歴や生活習慣の聴取によってリスクファクターをまとめるほか、心エコーによって心房内血栓の有無、ホルター心電図によって不整脈の有無、頚動脈エコーによるプラークの有無を調べたりなどの評価が必要となる。高血圧や非弁膜症性の心房細動があれば、そのコントロールは特に重要である。

脚注

参考文献

  • ニュースタンダード脳神経外科学 ISBN 9784895902670

関連項目

関連学会(国内)

のうこうそく
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出典:「フリー百科辞典ウィキペディア」(2009-01-01)
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