熱(ねつ、heat)とは、慣用的には、
肌で触れてわかる熱さや冷たさといった
感覚である温度の元となる
エネルギーという概念を指していると考えられているが、
物理学では熱とエネルギーは明確に区別される概念である。本項目においては主に物理学的な「熱」の概念について述べる。
概要
熱とは一般に高温を意味することが多い。一方で物理学では
エネルギーの移動形態として定義される。
日常会話における「熱」
日常会話において、「熱」という語には主に2種類の用法がある。
体温関係
「
体温」もしくは「正常時より高い体温」を表す語として「熱」を使うことがある。「熱が上がる」「平熱」のように用いられるのが前者、「熱がある」「熱が引く」のように用いられるのが後者である。どちらについても「温度」の概念を「熱」という語で置き換えており、物理学の観点から見れば正しい用法ではないが、日本語としては「正しい」用語である。
物理学的用法に近いもの
「熱をもったフライパン」など、「高温の状態」を意味する場合である。しかし、物理学的に正しく叙述するのならば「雰囲気に比べて高い熱量を持ったフライパン」となる。
物理学的「熱」
熱は
エネルギーの移動形態の一つである。物体間で
仕事を通じて移動する
以外のエネルギーの移動形態を
熱という(
伝導・
対流・
輻射)。「熱」という形態を通して移動したエネルギーの量を「熱量」という。人が感じることのできる「熱さ」「冷たさ」といったものは「温度」であり、日常会話の熱と十分区別する必要がある。なお、熱の移動に関係するエネルギーの出入りを扱う物理学を
熱力学といい、種々の基本法則によって支えられている。
熱は必ず高温の物体から低温の物体へと移動する。低温の物体から高温の物体へと自発的に熱が移動することはありえない(
熱力学第二法則と密接な関係がある事項である)。熱が移動した際に外部に熱が流出しなかったならば、高温の物体が失った熱量と、低温の物体が接触した物体から得た熱量は等しい(このことを「熱量保存則」と呼ぶことがある)。また、同じ温度ならばみかけ上熱の移動はなく、この状態を
熱平衡という。
ある物体(系)の温度を1K上昇させるのに必要な熱量を
熱容量といい、また、ある物質1kgの温度を1K上昇させるのに必要な熱量を
比熱容量(「比熱」は学術用語として用いない)という。
物理学の世界における「熱」の単位
国際単位系の単位(すなわちSI単位)は
J (ジュール)であるが、かつては
cal (カロリー)で扱われていた。1999年10月以降、
計量法により計量単位としてのcalの使用が禁止され、さらに2002年4月以降、中学校
学習指導要領で cal の単位が廃止されたことにより、現在では J で統一されている。しかし、今なお物理学の世界においても、慣習的に cal が用いられることがある。
(「cal」廃止の経緯および栄養学については「
カロリー」の項を参照。)
熱機関
仕事は熱に変換することができ、
摩擦による摩擦熱がその最も典型的な例である。しかし、熱を仕事に変換するのは容易ではない。熱を仕事に変換する装置は
熱機関と呼ばれている。また熱機関による熱から仕事への変換効率のことを
熱効率といい、通常
(
イータ:ギリシア文字)で表される。熱機関に与えられた熱を
、得られた仕事を
とすれば、
となる。熱機関においては、いかなる装置でも高温の熱源から低温の熱源への熱の流出を完全に防ぐことはできないため、
となる(すなわち、与えた熱を完全に仕事に変換できる)熱機関は存在しえない(
熱力学第二法則)。このことは
永久機関の存在の不可能性とも関連がある。
「熱」の歴史
熱素説
過去、熱に関してはその源として熱素なるものの存在が信じられていた(
カロリック説、または熱素説という)。しかし、これは後にラムフォードらによって否定された。ラムフォードが、大砲の製作現場の金属の削り取りにおいて際限なく熱が発生することに矛盾を見出だした、という逸話はよく知られている。熱素説が正しければ、摩擦による熱の発生はいつか停止するはずなのである。
熱エネルギーと内部エネルギー
粒子の
乱雑な並進・回転・振動などによる
運動エネルギーの総量を熱運動のエネルギーと呼ぶ。このエネルギーを「熱エネルギー」と呼ぶこともあるが、「熱」と「熱エネルギー」という用語は混同しやすいので注意が必要である。
熱エネルギーEの量は
- E=kBT kB:ボルツマン定数[J/K] 、T:絶対温度[K]
で求められる。
熱運動のエネルギーと、
粒子間の相互作用によるエネルギーとの和を、物質の
内部エネルギーと呼ぶ。
関連項目
*ねつ
ねつ
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出典:「フリー百科辞典ウィキペディア」(2009-01-01)
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