生涯
その後父・斎藤利三は主君の光秀に従い、ともに
本能寺の変で
織田信長を討った。しかし、
羽柴秀吉に
山崎の合戦で敗戦すると帰城、利三は坂本城下の
近江堅田で捕らえられて処刑されており、他の兄弟は落ち武者となって各地を流浪していたと考えられている。
福は女であることから追われることはなく、母方の親戚に当たる三条西公国に養育された。これによって、
公家の素養である
書道・
歌道・
香道等の教養を身につけることができた。その後、伯父
稲葉重通の養女となり、稲葉一鉄の縁者で
小早川秀秋の家臣である
稲葉正成の後妻となる。稲葉正成は、
関ヶ原の戦いにおいて、主君・秀秋を説得して小早川軍を東軍に寝返らせ、徳川家を勝利に導いた功労者である。のちに、将軍家の乳母となるために夫の正成と離婚する形をとり、
慶長9年(
1604年)に2代将軍
徳川秀忠の嫡子・竹千代(家光)の乳母に正式に任命される。選考にあたり、福の家柄および公家の教養と、夫正成の戦功が評価されたといわれている。
家光死後の
貞享3年(
1686年)に成立した『春日局略譜』によれば、秀忠夫妻が竹千代の実弟・国松(
松平忠長)を溺愛している様子を憂慮し、自害しようとした家光を諌め、元和元年、
駿府にいた
大御所の
徳川家康に竹千代の世継を確定させるように直訴したとされる。この直訴はその時は失敗し、後に家康が江戸城を訪れたときにその江与の溺愛ぶりを見て考え直した、という説もある。
一方でまた、
大奥の総取締に任ぜられて、奥向きの公務を取り仕切るようになり、将軍の権威を背景に
老中をも上回る実質的な権力を握る。
寛永6年(
1629年)には、家光の
疱瘡治癒祈願のため
伊勢神宮に参拝し、そのまま10月には上洛して
御所への昇殿を図る。しかし武家である齋藤家の娘の身分のままでは御所に昇殿するための資格を欠くため、血族であり(春日局は
三条西公条の玄孫になる)、また育ての親でもある三条西公国の養女になろうとしたが、既に他界していたため、やむをえずその息子
三条西実条と猷妹の縁組をし、公卿
三条西家の娘として参内する資格を得、
後水尾天皇や
中宮和子に拝謁、また
従三位の位と「春日局」の称号、および天杯をも賜る。後に官位は
従二位にまで昇叙した。
寛永20年(1643年)9月に死去、享年64。
辞世の句は「西に入る 月を誘い 法をへて 今日ぞ火宅を逃れけるかな」
- 法号:麟祥院殿仁淵了義尼大姉
- 墓所
- 肖像画:狩野探幽筆の肖像画が、麟祥院に所蔵されている。
異説
-
将軍家の乳母に登用された経緯には、京都所司代板倉勝重が一般公募した話などが伝えられる。あるいは、秀忠の正室お江与の侍女である民部卿局の仲介で乳母となったともされる。また、家康の手が付いていたという見方もある。乳母に過ぎない身分の者が将軍世継ぎ問題で家康に直訴したとしても、通常家康が会うとは考えにくいとして、お福がかつて愛妾の一人であったとする説もあるが、定かではない。映画「女帝 春日局」(1990年)はこの異説で描かれている。また近年、春日局が家光の生母という説があり、テレビの歴史番組などにも取り上げられている。
- 大奥では、乳母は黒子のように覆面をして授乳する奇習があった。これは春日局の権勢に懲りた幕閣が、将来の将軍と乳母のつながりが深くなり、後に政治に介入されるのを避けるために考案した風習という説がある。
-
山崎の戦いの後、義理の叔父である長宗我部元親を頼り、土佐の岡豊城で過ごしたという説がある。
縁故により出世した人たち
- 春日局が参内できるよう画策した三条西実条は、後に朝廷から武家伝奏に任じられ、最終的には右大臣になった。子孫の玄長は、幕府に高家肝煎として迎えられた。その際、縁のあった武家名字「前田」を名乗った。
- 春日局が強く望んで大奥入りさせられたお万の方は、三条西家の同僚の和歌の家である六条家の娘である。後に彼女の弟も幕府から高家として迎えられ、その際、こちらも縁のあった武家名字「戸田」を名乗った。
- 離縁した稲葉家の再興にも尽力し、浪人していた元夫の稲葉正成は松平忠昌の家老として召し出され、のち大名に取り立てられた。家光の小姓から老中に出世した者は多いが、その中には春日局の縁者も多い。特に実子である稲葉正勝と義理の孫に当たる堀田正盛が著名である。
- 姪の祖心尼とその夫・町野幸和が蒲生氏改易に伴い浪人したさいには、祖心尼を自分の補佐として出仕させ、また祖心尼の外孫・お振を大奥に入れた。お振は家光の側室となり千代姫を産んでいる。幸和も幕府直参旗本として取り立てられた。
春日局が登場する作品
- 小説
- 漫画
- 春日局 けふぞ火宅を 池田理代子
- バジリスク 〜甲賀忍法帖〜
- 映画
- TVドラマ
関連項目
外部リンク
補注
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出典:「フリー百科辞典ウィキペディア」(2009-01-01)
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