ターボチャージャー [Turbocharger] [被リンク数: 293]

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
側<ギャレット・エアリサーチ社製]] ターボチャージャー (turbo charger) は、内燃機関において、より高出力を得るために利用される過給機の一方式。

概要

排気管から廃棄されていた排気ガスのエネルギー(運動エネルギー・圧力)を利用しタービンを高速回転させ、その回転力で遠心式圧縮機を駆動することにより圧縮した空気をエンジン内に送り込む。これにより、内燃機関本来の吸気量を超える混合気を吸入・爆発させることで、見かけの排気量を超える出力を得る仕組みである。
多くのターボチャージャーは排気ガスの運動エネルギーを主に使う動圧過給であるが、舶用の2ストロークディーゼルエンジンでは、排気ガスの圧力変動をなくし一定圧にしてその圧力を利用して過給する静圧過給が用いられる。
過給器としての効率は良く、船舶や発電機など一定速で運転されるものでは、インペラやコンプレッサー、A/R比の設定が楽になるため、特に向いている。
タービンの回転速度は、自動車用ガソリンエンジンなど、小型のものの場合200,000rpm(毎分20万回転)を超えるものもある。高温の排気ガス(8〜900℃)を直接受けるため、その熱によりタービンやハウジングが赤く発光するほどである。
タービンの軸受けにはボールベアリングが使われるものもあるが、通常はエンジンオイルの圧送によるフローティングメタル式軸受けである。エンジンオイルは、高温の排気にさらされるタービンより伝熱する軸受けの潤滑と冷却のため自然吸気エンジンやスーパーチャージャー付きエンジンに比べ使用環境が苛酷であり、高性能または専用のオイルを使用したり交換周期を短くするなど、管理を厳密にする必要がある。また高負荷運転後すぐにエンジンを停止してしまうとエンジン内のポンプによるオイル循環が止まってしまうため、高温のタービン軸と軸受けメタルが直接接し焼き付きに至る場合や、高温の軸受け周辺に滞留したオイルによりスラッジが発生してしまう原因となるため、ある程度無負荷運転(クールダウン/アフターアイドル)をした後にエンジンを止める事が取扱説明書などでも推奨されている。主に純正装着のターボにおいては軸受け周辺のオイルギャラリーが水冷化されている場合が多く、前述の運転後のケアは特に不要であると言われているがクールダウンの励行は怠らないほうがよい。

歴史

スイスの蒸気タービン技術者であるアルフレッド・ビュッヒによって開発され、1905年に特許が取得された。1912年にはルドルフ・ディーゼルがディーゼル機関車の低回転域のトルクを向上させるために、ビュッヒの在籍していたズルツァーと提携し、ターボチャージャーを導入しようと試みた。ディーゼルエンジンには、1940年代に導入され、従来のスーパーチャージャーに代わって効率向上に著しく寄与した。
ディーゼルエンジン以外での最初の適用例のひとつはゼネラル・エレクトリックの技術者であるサンフォード・モスがV型12気筒エンジンの航空機用エンジン「リバティ」に搭載したものである。高度4,300mのコロラド州パイクスピークで試験され、高度の上昇によりもたらされる内燃機関の出力低下を低減することが確認された。
航空機用の高高度性能の向上のための手段として発想自体は古くから存在したが、この分野ではアメリカが他国よりも先行しており、ボーイング社が開発したB-17爆撃機1938年に搭載された、カーチス・ライト社製の星形空冷式1000ps級エンジン「ライト・サイクロンR-1820系」が史上初の実用例である。アメリカが他国に先行してターボチャージャーを実用化できたのは、頻繁に交換する消耗品と割り切って設計した事によるものであり、経済的に豊かな国だからこそできたと言える。
1978年にはB&Wが舶用2ストロークディーゼルエンジンに静圧過給方式のターボチャージャーを導入し、熱効率が一気に上昇した。
他国の高高度性能向上のための手段としてはスーパーチャージャーの採用が中心であったが、第二次世界大戦中には、アメリカの他にソ連ドイツ等でも軍用機エンジンに採用された。
戦時中の日本でも航空機用ターボチャージャー開発は進められていたが、試作レベルのものが三菱 局地戦闘機雷電に装着されて使われたケースはあるが、技術力と資材(特殊金属)不足ゆえに実用化できなかった。特に高温に耐える特殊金属の欠乏(代替金属の使用)は、排気タービンのみならず小型高出力エンジン()やジェットエンジンネ20)の開発・生産にも影響を及ぼした。ようやく一〇〇式司令部偵察機四型において実用化がなされたものの、程なくして終戦となった。
市販のガソリン自動車用としては1962年にアメリカのゼネラルモーターズ(GM)が「オールズモビルF85」と「シボレー・コルベア」にオプションで設定したのが最初となる。ただしコルベア自体の操縦安定性に難があったため、短期間で市場から消え、一般化するまでに至っていない。欧州車では1973年BMW・2002Turbo、日本車では1979年日産・セドリック / グロリアに初採用された。

種類

メリット

  • ターボチャージャーは高温高圧の排気ガス運動エネルギー、つまり本来なら大気中に廃棄される部分をタービンを介して利用するため、熱効率が上がる。このため小排気量エンジンでも大排気量エンジンと同等の出力を確保しやすくなり、「小型軽量のエンジンで大出力を得る」という相反する条件を満たし得る。
  • 同じ過給器でも、エンジンの出力を直接に使うスーパーチャージャーと比較した場合でも、先述したように排出されるエネルギーを使用するため効率が良い。例えば自然吸気状態の出力を100%、過給器による追加出力を30%とした場合、スーパーチャージャーではコンプレッサーを稼動させるためにクランクからエネルギーが取り分けられるため、最終的な出力は130%を下回るが、ターボチャージャーにはそのエネルギーロスがない(厳密に言うと、ターボチャージャー内の機械的な摩擦や排気抵抗の増大などのために少しだけ低くなる)。
  • 航空機の場合は、エンジン出力のロスが少なく過給が可能なため、気圧の低い相当な高々度に至っても性能を維持することが可能となる。航空機の場合ターボチャージャーと言われるより、排気タービン式過給器と呼ばれる事が多い。
  • 排気ガスが一度ターボチャージャーのタービンに当たり、それから(マフラー等の)出口へ排気されるため自然吸気エンジンに比べると排気音が小さい。 ただし現在の自然吸気エンジンでも消音器等で十分消音されている事、ターボチャージャー搭載のエンジン自動車はマフラー交換によりそのメリットが生かされていない傾向がある。

デメリット

  • 大量の混合気を強制的に送り込み燃焼させるため、エンジン温度が高くなりがちで十分な冷却対策が必要である。エンジン温度の高温化はエンジン内部での異常燃焼(ノッキング)を誘発しやすくなるため、過給圧と共に圧縮比や点火時期の設定を厳密に行う必要がある。理論空燃比・パワー空燃比と比較してリッチな(燃料を濃くした)混合気を送り、気化熱による冷却を期待していることもあり、ターボ=燃費が悪いという要因にもなっている。
  • 構造上スロットル(アクセル)操作に対するエンジン反応に遅れが生じる(「ターボラグ」という)。ターボラグはエンジンの回転と、その排気によりタービンの回転数が増し、同軸上のコンプレッサーによる過給圧が上昇するまでの時間差により発生するもので、スロットルの開度に若干遅れてエンジン出力が上昇するという形で現われる。このレスポンスを向上させる努力が各メーカで続けられている。
  • 一般的なターボエンジンは同形式・同排気量の自然吸気エンジンと比較すると、前述の異常燃焼対策のために圧縮比を低く設定するため、過給効果が出ない低回転域は馬力・トルク共に劣る事となり、自然吸気エンジンと比べてもドライバビリティーは悪い。これを嫌い、敢えて過給レスポンスに優れるクランクシャフト駆動のスーパーチャージャーを用いる自動車メーカーもある。
  • 排気系の取り回しに自由度の高い自然吸気エンジンと比べ、エキゾーストマニホールド直後に配置されるターボチャージャーが排気の障害物となるため、排気系による出力効率の向上が期待できない。
  • 自然吸気エンジンをベースにすることが多いが、その場合、増加する爆発圧力に耐えられるようにヘッドガスケット強度やシリンダーヘッド、シリンダーブロック剛性を充分に保つことと、ピストン頭部の熱対策が必要となる。多くの場合はボアを縮小したり、アルミブロックではなくあえて鋳鉄ブロックを用いる、またはアルミブロックに鋳鉄スリーブを用いるなどの対策を行う。大型車のディーゼルエンジンではCVダクタイル鋳鉄も用いられる。
  • 排気エネルギーを利用して吸気タービンを回すため、排気温度が上がりにくくタービン後に配置されている排気触媒が有効温度に達するまで自然吸気エンジンより時間がかかる。従って特にエンジン冷間時は有害ガスの未燃焼燃料(HC)や一酸化炭素(CO)が排気として排出されやすい欠点がある。ターボ車のアイドリング時に排気がガソリン臭くなるのは、暖機のために混合気を濃くしているためHCやcoが発生しやすい状態なのに、排気触媒が機能していないためである。<
コンプレッサーによる断熱圧縮やタービンからの伝熱により吸気温度が高くなる事で、熱膨張による酸素密度の低下(=出力低下)や異常燃焼が誘発される問題に対応するため、インタークーラーを併用して圧縮後の吸気を冷却し、効率向上を図っている例も多い。

用途

のエンジンに装着されているターボチャージャー(DMF13HZ形)]] 上述の通り、航空機において空気の薄い高空での出力維持のために用いられてきたが、現在ではレシプロエンジンは、高空を飛行する航空機用のエンジンとしては廃れており(ジェットエンジンターボプロップエンジンが用いられる)、今では使われる事は無い。
自動車では大出力を得やすいため、モータースポーツ用エンジンやスポーツカー向けの高出力エンジンなどでよく用いられる。かつてF1でターボエンジンが全盛だった頃、BMWが1,500cc 直列4気筒エンジンにターボチャージャーを組み合わせることによって1,500ps以上の出力を発生したと言われた。またホンダウィリアムズに供給していたエンジン(RA166E)でも1,500cc V型6気筒ツインターボの構成により常用1,000ps以上、予選用セッティングで1,500ps以上を発生したと言われている(はっきりとしないのは当時それだけの大馬力を正確に測定できる機器が無かった事や、レース車両に関わるデータは機密事項となるために詳細を公式に発表しないため) その後、安全性を理由にレギュレーションにより過給圧制限が加えられ(1987年は最大4バール、1988年は最大2.5バール)、1988年シーズンを最後にターボ装着が全面的に禁止されるに至った。
また空気のみをシリンダー内に吸入し圧縮を行うディーゼルエンジンは、過給を行ってもガソリンエンジンのような異常燃焼問題を伴わないことから、ターボチャージャーによる過給に適しており、自動車をはじめ鉄道車両気動車ディーゼル機関車)、船舶建設機械などの高速ディーゼル機関はもとより、大型船舶用の超大型低速ディーゼル機関にまでターボチャージャーが広範に用いられている。

日本車のターボチャージャー

日本においては、ディーゼルエンジンのターボチャージャーについては、当初、出力向上・燃費改善の手段として認可された。これはターボによって余剰出力が得られるため、変速機内の減速比や最終減速比を高めることで低燃費とすることができる、とする理論であった。
当初の1960年代には、大型のバス・トラックに採用された。1980年代以降、直噴式ディーゼルエンジンの普及に伴い一層熱効率が高まった。インタークーラーも普及し、現在ではディーゼルエンジンでターボとインタークーラーの装備は常識化している。
更に最近は自動車排出ガス規制の強化もあり、ドライバビリティーの点で従来好んで自然吸気式ディーゼルエンジンが多く採用されていた都市型(路線)バスやダンプトラックや、2トンクラスの小型トラックなどの中・小排気量のディーゼルエンジンにおいても、ユニットインジェクターやコモンレール式燃料噴射装置、尿素SCR還元装置、インタークーラーと並び、ターボチャージャーはディーゼルエンジンに必須の装備となっている。
ガソリンエンジン乗用車へのターボチャージャー搭載は、この時期排気ガス対策に追われ出力向上手段に安直な排気量増大で対応したこともあり、1970年代の日本では採用されなかった。
1980年代初めに日産自動車が、「燃費改善の手段」と称して「燃費でもターボ」のコピーでセドリックを始めとする乗用車に搭載して発売した。しかし、以降は乗用車では主にスポーツカーセダンのスポーツモデルの出力向上策としての面が前面に出された。設計が古くなり出力に劣る自然吸気エンジンにターボチャージャーを付加することにより、エンジンの市場価値を延命させたのである。これにより、新エンジン開発費用の削減とエンジンの量産数アップの結果、エンジンのコストダウンに寄与した。しかしながら、設計が古い=重く大きく燃費が悪いエンジンをベースとしたので、「ターボ=燃費が悪い」というイメージが一般に定着した。
後にターボチャージャーを2基使用した「ツインターボ」も登場し、1985年トヨタ自動車マークIIクレスタチェイサーも含む)が初採用となった。
日本におけるガソリンターボ車の性格として、1300cc-1500ccクラスの小型車枠で2000cc並の、2000ccクラスの「5ナンバー枠」内で2800-3000cc級並の、また550-660ccの軽自動車枠で1000cc-1200cc並の性能を得る、「節税手段の一種」として用いられる面があった。軽自動車では現在でもその傾向が強い。
ターボが認可された本来の意味でのターボ車としては、ワンボックスカーや、ミニバンでワンボックスカーの変遷に位置する車両に伝統的に採用されている。しかし、これらはディーゼルエンジンを採用しており、ガソリンエンジンの採用例はバネット ラルゴ コーチ CG22型の後期で1800ccのエンジンが採用された。売りは走行性能であったが、燃費でも2000ccの自然吸気ガソリンエンジンより優秀であった。
2000年頃には、世界的な排ガス規制の強化により、ガソリンエンジンのターボ過給は不可能になるのではないかという観測がなされた。エンジンからの排出ガスの持つ熱エネルギーが、ターボチャージャーの駆動に当てられるため、タービンを通過した排気ガスは温度が低下し、排気ガス浄化装置である三元触媒の浄化作用が得にくくなる。また、高い過給圧をかけ、高い出力を引き出すため、エンジン強度が求められるほか、ノッキングの抑制のためにエンジン本体の圧縮比を落としたり、同目的で、理想空燃比を大幅に超えるガソリンを吸入させるガソリン冷却が行なわれるため、過給がかからない領域では出力に見合う燃費を得にくい。ターボでは、補機類が増えることでコストが増すため、大排気量の自然吸気エンジンを搭載したほうが車両コストの削減になるというのも理由であろう。
しかしながら、ターボチャージャーと排気マニホールドの一体化等による排気系の熱容量の低減や、直噴による圧縮比の向上により、ターボチャージャーは現在なお世界の自動車メーカーで採用され続けている。また、ターボ過給は、最高出力の向上のみを目指すのではなく、同程度の最高出力、トルクをより小さい排気量のエンジンで実現し、燃費の向上を目指すという、ディーゼルエンジンと同様の「ダウンサイジングコンセプト」が広まりつつある。
また、元々日本車は、以下の理由から、ターボ採用によるデメリットが小さい。
  • によりターボラグの小さな小型タービンを廉価に製造できる。
  • 上記に加え、エンジンが非常に。
  • 、後に補助的に使用していたに過ぎなかった(※)。
  • : (本田技研工業CVCC』や富士重工『SEEC』など。後にほぼ必須となるが、それ以前の浄化システムも併用している)
  • エンジンブロックのオールアルミ化により熱効率が向上し、ガソリン冷却を以前ほど必要としなくなった。
※:それどころか、日本の高過給ターボ車の場合、燃焼温度が上がりすぎ、比較的熱に弱い触媒を溶かしてしまうケースすらある。このため、排気の流量抵抗を減らしターボの効率を上げると共に、自身の耐久性や浄化効率を向上した「スポーツ触媒」が、HKSなどから発売されている。
このため、ラリー用自動車のベースや、コンパクトカーのスポーツ・モデルを中心に、未だに設定率が高い。排ガス規制や税制の改定で、ターボはかえって重量面で不利になったことなどから、かつてのブームの時のように「猫も杓子もターボターボ」という状況はなくなったものの(日産・エクストレイルなどのように、いままでターボ付きエンジンが設定されていた車種でも、モデルチェンジ時に取りやめることが多い)、全体の比率からすると、日本は今でも「ターボ車王国」であると言われる。特に、エンジン排気量が最大660ccと制約のある軽自動車では、出力確保の為に多用されている。乗用車でもターボの独特の加速感と吸気音を好むユーザーが存在し、また、改造により過給圧をあげることで容易にパワーを向上させることができるため、根強い人気は存在する。自然吸気エンジンに改造によりターボを装着するケースも見られる。 また、マツダ・アテンザアクセラMPVCX-7に搭載されているガソリン直噴ターボエンジンは、低燃費かつ平成22年規制、平成17年度排出ガス基準75%低減レベルに適合し、次世代のターボエンジンとして期待されている。これは、ガソリン直噴エンジンとターボチャージャーの相性の良さに由来するものである。通常のポート燃料噴射式のエンジンでありながら、平成17年度排出ガス基準50%低減レベルを達成したスバル・レガシィも登場し、ターボエンジンでもある程度は環境性能の確保が可能となった模様である。

チューニング

ターボチャージャー装着車両特有のチューニングとしては、以下のようなものがある。

ターボチャージャー本体

その他

主要メーカー

関連項目

----------------------------------------------
出典:「フリー百科辞典ウィキペディア」(2009-01-01)
Text is available under GNU Free Documentation License.
ご利用上の注意

制限事項


Sensrについて
Powered by EAST, SAGOOL, kizasi, hatena, OKWave.